この音に対するレンズは、音響レンズと呼ばれ、陸上ではサファイア製のレンズが作製されており超音波顕微鏡注1)などに用いられている。海中においても、音響レンズを用いて海中の映像を得る研究がなされているが、まだ、実用化はされていない。研究の例としては、米国スクリプス研究所のバッキンガム、ポッター、エピファニオらによってパラボラ反射板の焦点に水中マイクロホンをつけたADONISと呼ばれる音響レンズが設計され、動きの素早いシャチなどの映像を捉えることに成功したとの報告がなされている。
(3) 今後の展望
今後も、海中のより鮮明でリアルタイム画像の伝送をめざして海中で得た画像の精度や取得時間の短縮などの向上が望まれる。また、音響レンズが実用化され、小型の精密アレイが可能となれば光に対するカメラと同様な音響カメラが可能と考えられる。一方で、取得した画像の利用という観点からの展開も期待される。例えば、海洋科学技術センターでは「しんかい6500」で得られた画像を画像データベースとしてインターネット上で公開しており、通常では見ることのできない深海の状況を垣間見ることが出来るようになっている。このような公開データベースにより家庭や学校に居ながらにして海とのつながりをもつことが可能となる。また、陸上でのバーチャルリアリティ技術の発展とその海中画像との融合により、海中での擬似生活などができるようになる可能性も考えられる。
[参考文献]
・情報処理学会編「新版 情報処理ハンドブック」(1995).
・「マグロウヒル科学技術大辞典 第3版」日刊工業新聞社(1996).
・谷内田正彦編「コンピュータビジョン」丸善(1999).
・越智寛、“水中通信・データ通信”、日本造船学会誌 823、37(1998).
・浦環、高川真一編著「海中ロボット」成山堂(1997).
・M.J.バッキンガム、J.R.ポッター、C.L.エピファニオ、日経サイエンス、4月号、38(1996).
注)1細く絞った数百MHz以上の超音波ビームを資料に2次元に走査しながら照射し、透過波または反射波を解析することにより資料の弾性率を反映した像が得られる。