2.2.2 海洋分野における技術開発の現状と課題
「海洋」に関して、国および地方公共団体が実施しているプロジェクトをリストアップし、その動向を分析した。
(1) 省庁による縦割り
各省庁の海洋への取り組み状況をみると、省庁ごとにテーマが区分けされる傾向にある。このため、分野横断的なテーマの実施がほとんどない。
運輸省:
・地球環境問題に関しては、「地球温暖化対策」、「海洋汚染対策」、「大気汚染」、「海洋環境マネジメント」と多岐にわたりプロジェクト実施。
・海洋における「構造物」や「船舶」について、数多くのプロジェクトを展開。
科学技術庁:
・科学技術および地球環境問題からの視点で多くのプロジェクトを実施(地球環境問題に関しては、「監視一観測」および「モデリング・現象解明」中心、具体的な対策技術に関しては、未着手)。
・生活、産業、交通や資源については、力点なし。
農林水産省:
・「海洋生物」、「海洋汚染対策」、「水産資源」と広範囲に実施。
・プロジェクトの性格としては、応用的な技術開発より、むしろ基礎研究に重点。
通商産業省:
・地球環境問題に関しては、「地球温暖化対策」、「海洋汚染対策」、「海洋環境マネジメント」と多岐にわたり実施。
・「地球環境問題の対策」にまで踏み込んで実施。
・「海洋科学」や「鉱物資源」にも力点。
環境庁:
・環境分野に関して、「地球温暖化」「海洋汚染対策」「海洋環境マネジメント」等、幅広くプロジェクトを手がけている。
(2) 研究プロジェクトの方向性
・地球環境問題や資源、エネルギーに関連した分野では、基礎研究に重点が置かれており、重要テーマにも関わらず応用研究がない。
・基礎研究の中では、「遺伝子」等のマリンバイオテクノロジーや、「水中コミュニケーション」等の情報通信技術に関しては有望視されるものの現状では取り組みがない。
(3) 空間利用分野におけるプロジェクトの偏り
・空間利用分野については、プロジェクトの内容に非常に大きな偏り。(海洋構造物に対するプロジェクトと船舶に対するものにほぼ限定、生活、リクレーション、産業といった、いわゆる海洋空間の利用という観点でのプロジェクトはほとんど実施されていない。)