3)金沢海の公園(干潟)
【生息場創出において重点を置いている事項】
1]生息場内部の環境条件の設定
アサリの定着を目標と、底質、地盤高をアサリの生息条件から決定した。
(4]人間活動の活用)
当初から目指したものではないが、静穏であるためアオサが集積し、回収事業を行わざるを得なくなった。これにより、結果的には人間活動によって水中の物質が陸上に取り上げられている。
横浜港金沢地先の海の公園は、海水浴場等、海辺のレクリエーションの場を提供する目的で創られた砂浜干潟である。
造成にあたっては、潮干狩り場として利用するために当初からアサリの定着を目標とし、中央粒径0.25mmの山砂を用いた(細川、1995b)。また、地盤高についてもアサリの生息水深(5m以浅)を考慮し、-7〜+3.6m(C.D.L)に設定した(図-3.2.3)。この結果、造成直後にはバカガイ、シオフキガイが発生したが、その後しだいにアサリに遷移していき、自主的な再生産が継続している(細川、1995b)。
一方、アオサが大量に漂着し、アサリの生息を阻害すると同時に腐敗して異臭を放つことで問題になっている。アオサは富栄養化した海域に多く発生する海藻であり、幼体は基質に着生して生育し、ある程度の大きさになると基質を離れて浮遊しながら成長を続ける。基質に着生したアオサと浮遊しているアオサの分布をみると、着生アオサは海の公園に隣接した野島海岸でも多くみられるのに対し、浮遊アオサは海の公園に集中している(図-3.2.4)。これは、海の公園では前面の八景島によって波浪が遮られ静穏度が高いため、浮遊アオサが集積されやすいことが原因と言われている。一方、海の公園と野島海岸の水質を比較すると、栄養塩濃度は海の公園の方が低く(図-3.2.5)、アオサによる栄養塩の吸収が反映されたものとも考えられている(能登谷、1999)。海の公園ではアオサの回収事業が行われているため、吸収した栄養塩は藻体として取り上げられ、海域から除去されることとなる。