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3.2 生息場創出事例の現状と課題

 

「1.1 基本的な考え方」において、生息場創出にあたっては以下の4つが重要であることを示した(図-1.1.7)。ここでは、これまでに行われてきたいくつかの生息場創出事例において、こうした考え方のどこに重点が置かれているかを検証するとともに、生息場創出事業における今後の課題を抽出した。

 

【生息場創出において重要な考え方】

1]生息場内部の環境条件の設定

2]外的インパクトの制御

3]周辺環境・他の生息場との関連

4]人間活動の活用

 

(1)生息場創出事例・研究例における考え方

1)三河湾浅場造成(浅場)

 

【生息場創出において重点を置いている事項】

2]外的インパクトの制御

地盤高を貧酸素による死亡の起こらない地盤高にすることによって、外的インパクト(貧酸素)から浅場の生物を護る。

 

中尾ほか(1999)は、三河湾を対象にして貧酸素域における浅場造成の考え方を提示している。

三河湾の夏季の貧酸素域は年々範囲が広がっており、かつ長期化の傾向にある。これはアサリ等の底生生物に深刻な影響を与えており、いったん貧酸素が発生すると深所だけでなく、浅所にまでおよんで斃死を引き起こしている(図-3.2.1(b))。そこで、中尾ほか(1999)は貧酸素の影響を受ける海域に浅場を造成し、その影響を軽減することを提案した(図-3.2.1(c))。

その際に重要になるのは浅場の地盤高の決定の仕方である。中尾ほか(1999)はアサリ生残率モデルを用いて任意水深における生残率を計算し、貧酸素発生時にもアサリが70%以上の生残率を確保できる水深は-1.3m〜-3.8m(D.L.)以浅であるとの結果を得た。さらにこれらの浅場造成、覆砂を行うことにより、対象海域の底生生物による水質浄化能は現状の2.8〜3.6倍になると推定している。

 

 

 

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