(2)海水交換の促進
対象海域の外の水質が良好な場合には、導流堤など構造物の設置、水路の開削、作澪など地形の改変によって流動を制御し、海水交換の促進を図ることは水質改善技術として有効である。港内など防波堤で閉め切られた閉鎖性の強い場所では、防波堤断面の一部を空洞にし、海水交換を促進させる事業も行われている(三田尻中関港)。
海水交換の促進技術は水中の物質を物理的に拡散、希釈し、沈降抑制するものであるため、即効性は高い。また、潮流などのエネルギーを用いて持続的に行われるため、改変した地形等がもとに戻らない限り、効果は維持されるのも長所の一つである。ただし、流動環境の大規模な改変は海湾全体の流動バランスを崩壊させる恐れがあり、自然生態系に大きなダメージを与える可能性があることが指摘されている(上嶋、1995)。
流動環境を制御したときの水質改善効果は水理模型実験等によって予測、検討が行われており(宝田、1993、 上嶋、1995)、水質改善に対しては効果を予測することが可能であると考えられるが、生態系への影響までは予測困難なのが現状である。