現在の藻場分布をみると水質の比較的よい湾口部や湾中央部の一部に分布し、湾奥部では生育可能な生育基盤が存在するにも関わらず分布していない。藻場を構成する海藻草類の取り込みによる水質浄化機能は流入負荷に比べ大きなものではないが、環境悪化の初期段階で大幅な減少がみられることからわかるように人為的な影響を受けやすい生物で環境改善による生物の修復、復元の指標となるものであるといえる。
1]藻場の分布状況と変遷
[目的]
a.4海湾における藻場の分布状況の量的な把握
b.水質浄化機能の低下の一因としてあげられている藻場の変化の整理
[結果]
・藻場は、面積でみると有明海が約1,600haと最も大きく、他の海湾で約340〜640haとなっている。
・藻場が海域面積に占める割合をみると、最大でも、三河湾、有明海の1%程度と小さい。浅場に占める割合も、大阪湾や有明海でも3%程度と小さい。
・1950〜60年代に比べると藻場の現存割合は10〜20%程度となる(東京湾、伊勢湾、三河湾)。
・1977年以前の藻場面積は調査年が異なるため一概に比べられないが、多くの藻場が消滅している。
・藻場の減少(1978から1993年)は、大阪湾、三河湾、有明海で大きく、減少量は有明海で大きい。
・1978年と1993年の藻場面積を残存割合でみると、東京湾、伊勢湾では変化がなく、有明海で約9割、三河湾及び大阪湾で約7割に減少している。
[藻場の消滅理由]
・1978年と1993年消滅藻場面積は、埋立て、海況変化等によるもので有明海約750ha程度、三河湾170ha程度、伊勢湾40ha程度となっている。
・大阪湾では、埋立、海況変化等による消滅面積はないが、藻場面積が減少している。これは、藻場の消長によるものと考えられる。
・有明海では、埋立て等により約750haの藻場が消滅したが、既存藻場の増加(消長)がみられ、1978年と1993年の間では257haの藻場の減少にとどまっている。
・1978年以前の藻場の消滅は、藻場の分布する浅海域の埋立てによるものも含まれるが、水質等の環境悪化に伴う透明度の低下による生育環境の悪化によるものが多い。