(2)藻場
1)機能
藻場の機能は、以下のように分類される((財)港湾空間高度化センター、1998b)。
1]生物生息機能(幼稚仔育成機能、餌料供給機能)
2]水質浄化機能
3]生物生産機能(産卵場機能)
4]底質の安定化機能
5]その他(植物プランクトン増殖抑制機能、流れ藻供給機能)
このうち、2]水質浄化機能は、以下のように分類される。
a.物質を藻場内で一時的に安定な形で貯留する作用
・海藻草類による水中の無機物の吸収・同化
b.物質を藻場の系外に運び出す作用
・海藻類の採取による物質の移出
・海藻草類を餌料とする魚介類の移動に伴う物質の移出
これらの浄化機能のうち、以下の作業では「藻場を構成する海藻草類による水中の無機物吸収・同化」、つまり、4海湾における海藻草類の現存量に着目して、検討をすすめる。
なお、今回の検討では、干潟で取り扱ったように、海湾内に存在する主な藻場についてのデータが得られなかったことから、藻場については、4海湾における藻場の特徴について整理、検討した。
2)代表4海湾における藻場の状態
沿岸海域に存在する藻場は、生物の生息場としての機能を持ち、藻場を構成する海藻草類による水中の無機物の吸収・同化が行われている。しかし、水質汚濁による透明度の悪化、藻場の分布する沿岸域の埋立てによって藻場が減少してきている。
ここでは、代表的な閉鎖性海湾である東京湾、伊勢・三河湾、大阪湾、有明海を対象に、藻場の分布状況(図-2.2.8)と経年変化を把握した。次いで、海藻草類の現存量に着目した検討を行い、藻場の構成種と生育環境の関係を検討した。それぞれの検討結果の概略を以下に示す。