これらのことから、以下のような干潟で、生物が多く生息し、高い浄化量が得られるものと推察できる。
a.勾配がゆるやかで安定している。すなわち、波浪等の物理的な影響を受けにくい場所であること。
b.貧酸素の影響を受けずに生物の死滅がないこと。
c.底質CODがある程度高いこと。すなわち、河川等の負荷源があり、ゴカイ等の干潟に生息する底生動物に安定して餌料を供給でき、生物生産が維持されていること。
一方、環境条件のデータでは、生物量(湿重量)と粒度、強熱減量等との関係が見出せなかった。これは、利用したデータが、平均的生物量と平均的な底質データを比べたことによるものと考えられる。今後、このようなデータは、場所や時期に十分留意して蓄積していく必要がある。
また、生物相から浄化量を求めるにあたっては、現存量と種組成の項目が計算条件となるが、干潟固有の生物の成長速度等が分かれば、より精度の高い結果が得られると考えられる。
さらに、今回の作業では対象としなかったが(現存量のデータが得られなかったため) 、干潟上に生育する付着藻類等の他の生物による有機物の取り込み量も大きいことが指摘されており、干潟の浄化量として表現する必要がある。
干潟上で生じる食物連鎖に着目すると、水鳥による採餌や漁業は、系外への移流に貢献している。