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2]既往知見による浄化量の試算

干潟は、流入した有機物や栄養塩類を物理的作用や生物的作用によって除去し、海水を浄化する機能を持っている。現在では、干潟の浄化量の算定を物質循環モデルや生態系モデルなどシミュレーションを用いた推計方法が採用されている(事例として、盤洲干潟、三番瀬、一色干潟等がある)。しかし、計算が複雑で、大型のコンピューターを使用するなど、だれでも容易に計算できるものとはなっていない(木村、1998)。

そこで、おおむね妥当な値が得られ、かつ簡便でだれでも容易に計算が可能な手法(木村、1994)を用いて、各海湾の浄化量を算出した。

上記文献は、底生動物の現存量に着目して、東京湾内の干潟(盤洲干潟、三番瀬、葛西人工海浜等)の持つ浄化量を算定している。その手法を用いて、伊勢湾木曽川河口、小鈴谷、一色干潟、有明海大牟田の干潟での浄化量を試算した。ここで言う浄化量は、「物質を干潟内で一時的に安定な形で貯留する作用」のうち、底生動物の現存量をもとに、底生動物の生産量からの有機物浄化量を算出したものである。

主な干潟別の浄化能力の試算方法、結果及び各項目の算出根拠を表-2.2.2に、底生動物による単位面積当たりの有機物浄化量を図-2.2.5にそれぞれ示す。なお、算出するために用いた基礎データについては付属資料に示した。

また、参考として生態系モデルを使った事例として、干潟生態系モデルの概念図を図-2.2.6に、夏季と冬季の計算結果を表-2.2.3に示した(中田、畑、1994)。このモデルは、Baretta and Ruardijのモデルの方法を窒素循環に適用、東京湾の盤洲干潟を対象としている。ここでは閉鎖性の富栄養化が進んだ内湾を考え、浄化の定義を「陸域または沖合域から海岸帯に負荷された物質(炭素、窒素、リン)が海岸帯において水柱から除去され、富栄養化現像であるプランクトンの異常増殖や貧酸素水塊の発生を軽減させること、すなわち海岸帯におけるマクロ生物の固定、底土の堆積、漁業による取り上げ、大気への放出など」としている。

 

 

 

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