2.2 浅海域の生物機能の現状と役割
干潟・浅場や藻場の存在する沿岸域は、陸域との接点で、河川や排水などにより陸域から栄養塩が流入する場であり、植物の光合成による基礎生産力(生物生産機能)が高く、これに支えられる底生生物などの生物の吸収・同化により水質浄化機能が高いと言われている。一方で、港湾や埋立てなどの開発や水質、底質などの環境悪化によって、沿岸生態系の物質循環や生物生産機能の低下が問題となっている。
生物による物質循環は生物の現存量、生物生産の大きさと関係する。一般に沿岸域では生物生産が大きく、生物による水質浄化機能が高いと考えられ、とりわけ、干潟、浅場や藻場では基礎生産力が高く、生物が多く存在することで浄化量は大きいものと考えられる。
ここでは、生物が浄化等の物質循環に果たす役割に着目し、干潟・藻場における生物が持つ水質浄化機能を把握するために、干潟・藻場をとりまく環境条件、知見等を整理し、干潟や藻場が水質浄化に果たす役割と干潟や藻場の機能の差がなぜ生じるのかを検討した。