[汚濁の状況]
東京湾の主な汚濁は、夏季に広範囲に形成される貧酸素水塊、湾奥部の千葉県沿岸域に発生する青潮、湾奥部に多発する赤潮、広い範囲に存在する有機堆積物があげられ、湾奥部や運河部などで生物の生息が脅かされている。
貧酸素水塊は、成層構造の発達する夏季を中心に湾奥部の水深10〜20m付近や水深約20mの深堀に形成されている。この深堀の貧酸素水は湾奥部沿岸域に発生する青潮の原因の一つとなっている。また、底層の貧酸素化は底泥からの栄養塩を溶出させることになり、赤潮の原因となるなどの悪循環を招いている。
[汚濁の原因]
湾奥部の広い範囲で形成される貧酸素水塊の主な原因は、湾奥部に集中する河川水の影響による成層構造の発達(DO供給の減少)、赤潮によるプランクトン沈降と底層でのDO消費、湾奥部の弱い流れと環流の存在があげられる。これらの現象が湾奥部に集中することで湾奥部の環境悪化が生じている。
湾奥部の千葉県沿岸で生じる青潮は湾奥部や深堀の底層にたまった貧酸素水が風等の要因で湧昇し、沿岸域に造成された人工海浜や干潟の生物の生息を脅かしている。
また、東京港、川崎港、横浜港は埋立てにより運河部ができ、流れの停滞や河川からの流入負荷により貧酸素化が生じている。
[生物の状況]
貧酸素水の影響を受けにくい水深5m以浅の浅場や干潟、藻場は湾央部東側の千葉県沿岸域や湾口部に存在し、これらの場が生物の成育場や定着性の底生生物の生息場となっているほか、湾内にはプランクトン等を捕食するイワシ類等の浮魚も多く来遊し、生物による浄化機能や漁獲による取り出しなど水質浄化に寄与していると考えられる。