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(1)海洋環境汚濁の的確な把握

本来海域の持っていた物質循環システムを修復し、海洋環境を改善するためには、対象とする海域の環境の現状を物質循環の視点から把握し、環境悪化の経緯や特徴を整理し、汚濁がなぜ生じているのか(汚濁の原因)、どのような過程で汚濁が進行したのか(汚濁の仕組み)、その結果どのような現象が生じているのか(汚濁の現状)を把握する必要がある。

一般にわが国における沿岸域の閉鎖性の強い海湾は、東京湾、伊勢湾、大阪湾に代表されるように、背後に大都市圏を抱え流入負荷が大きいことに加え、海岸付近は港湾等で高密度に利用され、本来生物が豊富に生息することで陸域からの負荷を一時的に貯留する緩衝帯的な役割を担ってきた浅海域が減少した。そのため、「浄化−生産機能」が低下し、直接的な負荷の影響もあって水質や底質が悪化し、環境汚濁が進行しているものと考えられる。汚濁の進行はまた、海湾内部の流動、海水交換や鉛直方向の循環を阻害する密度躍層の形成等とも密接に関連している。したがって、環境汚濁の実態を知る上で、地形、水深、季節風、潮汐、淡水流入量等は、基本的な項目として把握しておかなければならない。また、干潟、浅場、藻場など生物生息場の状況、生物の生息を脅かす貧酸素や赤潮等の発生状況は生物の「浄化−生産機能」の現状を把握する上で必要となる。

特に、生物の生息を阻害する貧酸素水塊、青潮、赤潮、底質悪化は海洋環境の汚濁そのものであり、海湾固有の物理的特徴の中で流入負荷がどのような過程を経て汚濁に至ったのかを把握する必要がある。このように物質循環に着目しながら検討を進めるために必要な事項の概略を図-1.2.2に示した。

以下にもう少し具体的に物質循環に関する検討の内容を記す。

 

 

 

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