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2)時間に対する考え方

自然や生物機能に着目した改善策は、基本的には即効性を目指したものではなく、生物の成長やライフサイクルに合わせ、緩やかで持続的な、長期的視点に立った改善である。しかし、現在の沿岸海域では貧酸素、青潮など生物の生息を脅かし、死滅を引き起こす現象が発生しており、これによって生物機能は一挙に低下するとともに、死亡した生物体の分解によって栄養物質が水中に回帰し、さらなる環境悪化を招くという悪循環が生じる。また、一旦低下した生物機能は、環境が回復しても元のレベルに戻るまでに時間を要するため、生物の死亡を回避することは、長期的な視点でみた生物機能の維持のためにも重要である。

生物の死滅を招く貧酸素水塊の発生は、成層構造の発達する夏季を中心に発生する。貧酸素化を根本的に防ぐためには負荷、底質、流動等の様々な環境要素を制御しなければならないが、貧酸素が一時的なものであれば夏季のみを対象にして即効性の高い技術(例えば曝気等)を適用し、生物の死滅を回避することが効果的である。これによって生物機能が季節的に極端に低下することが防がれ、栄養物質が水中に回帰することがなくなるなど、長期的な視点からみた環境改善の一助にもなり得る(図-1.1.10)。

海域環境は季節によって大きく変化する。水質汚濁の変化やその原因も季節による周期性を示すことが多く、これに着目して適切な対策を講じることが必要である。

 

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図-1.1.10 生物の死滅を招く環境悪化と短期的改善策導入の考え方

 

 

 

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