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5. 開発装置の運転実験

 

小型試験片とモックアップ船体において上向〜立向姿勢に変化する部分について繰り返し溶接実験を行い実船適用可能範囲(能力設定)と溶接条件の設定を実施した。モックアップ船体溶接実験については、凹凸のある地面上に溶接長最大約4mの試験体を設置し、現場で想定される諸条件をアレンジして本開発装置全体の性能確認の適用範囲設定を行った。

 

5.1 溶接条件収集実験と設定

 

第2段階の開発で改良を施した溶接方法により板厚、ギャップ、溶接姿勢および開先状況について小型試験片で溶接実験を実施した。この結果を元に最適条件を収集し、溶接条件適応制御の基本条件とした。

適用した小型溶接試験片のサイズは以下の通りである。

長さ500mm、板幅200mm(×2枚)、板厚12〜25mm

長さ1,000mm、板幅200mm(×2枚)、板厚19mm

 

5.1.1 板厚適用可能範囲の設定実験

板厚12〜25mmの範囲について運転実験を行い適用可能板厚範囲を調査した。

図5.1.1にI開先による各板厚の溶接試験結果を示す。板厚12〜19mmの範囲については、溶接ビードの形成が可能であったが、板厚22mm以上になると後に詳しく述べるが、溶接条件によらず1層目と2層目の間にスラグ巻き込みや融合不良といった溶接欠陥を発生した。

これは板厚が増加するに伴い、後行電極にて溶接しなければならない高さ(開先深さ)が増加するため、後行ビード底部において十分な溶け込み量が確保できなくなるためである。そこで後行電極による底部溶け込み量を確保するために、後行ビードのみに開先をとったY開先を用い、また後行電極の電流を増加させて溶接実験を行った。結果を図5.1.2に示す。後行ビード底部の溶け込みは改善され、スラグ巻き込み等の欠陥は発生していないが、板厚25mmでは開先断面積の増加により溶着量が不足している。また板厚22mmでも、ギャップの増加によって、完全にビードを形成することはできない領域が発生する。そこでこれらの板厚では本溶接施行後、半自動溶接で残った開先部分を埋める2次的施工方法が考えられる。板厚25mmにおいて半自動溶接による仕上盛り溶接を施工した結果を図5.1.2最下段に示す。以上、板厚ごとの施工法をまとめると図5.1.3のようになる。

 

 

 

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