4. 開発装置の改良
第一段階に開発したプロトタイプ機の性能確認実験で生じた装置の不具合、改良必要部等について改良部の設計・製作を行い、システムのブラッシュアップを行った。
4.1 自動溶接装置の改良設計・製作
4.1.1 溶接トーチ部の改良
溶接トーチの耐久性、シールド性向上、2電極一体化等について改良を行った。
(1)溶接トーチの強度と耐久性向上
本溶接施工法は、開先内に溶接トーチを水平状に挿入する方式である。このため溶接トーチは、開先断面積を最小化するためにできる限り細径の溶接トーチとする必要がある。第1段階の開発で試作したトーチは直径9mmの部分が、先行230mm、後行330mmと長尺であるため、強度的に連続使用に問題があった。
改善策としてまず2極一体化について検討を実施したが、使用する溶接電流値により、極間距離を変化させる必要があることがわかり、先行極と後行極の極間距離が決定される一体化した溶接トーチは、汎用性に欠ける。そこで、2電極別々に強度向上策を検討した。
先行トーチの強度向上、耐久性向上に以下の3点について改良を実施した。
・トーチの断面積を増加させた。(開先挿入部分では幅9mm、縦20mmの矩形断面とした、それ以外の部分では直径20mmとした)
・トーチ全長にわたり冷却水経路があったが、これを根本の部分のみにし、ワイヤ送給経路以外を銅とすることで剛性を強化した。これによって冷却能力は減少するが、連続使用に問題はなかった。
・ワイヤ送給経路内にコンジットライナを挿入し、ワイヤ送給性を向上させた。
後行トーチの強化方式としては、改良した先行トーチと同タイプのトーチ製作が困難であったため、内部構造は第1段階で開発したものと同タイプのものを使用したが、後行トーチ下側に8mm×16mmの支持棒(SUS製)に添わせることにより剛性を強化した。
後行トーチの形状は、施工方法を改良していく過程で溶込形状の改善、内部欠陥削減などの点から極間距離が120mm以上を必要とすること、トーチ角度を20°〜45°程度必要とすることから、溶接トーチが外板上部に幾分突出する形状とした。
改良した先行トーチ、後行トーチの外観をそれぞれ図4.1.1、図4.1.2に示す。