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1.8 溶接条件適応制御方法の選択

 

リアルタイムに検出されたデータを受信演算し、最適溶接条件を出力して溶接電流・電圧・溶接速度を制御する制御方法の検討を行い選択した。

 

a. 多電極時の溶接条件適応制御

適正な溶接を行うには溶接状況(溶接板厚、溶接姿勢および溶接開先幅)に合わせた溶接条件(溶接電流、溶接電圧、溶接速度等)を選定することが重要である。

今回の場合、船底外板の板厚は船種または溶接する船の部位によって異なり、その板厚は16〜22mmまでが想定される。溶接姿勢は水平な船底外板から曲がりを有するビルジ外板まで溶接すると0〜90°まで変化する。溶接開先幅はブロックの取り付け精度および切断精度によって11〜19mmまで変化すると想定される。

この様に溶接状況が大きく変化することから、これらの溶接状況に合わせて溶接条件を制御する適応制御方法について検討した。

図1.8.1は適応制御の概念図である。本制御は、前もって代表的な溶接状況に対する最適な溶接条件をデータベースに格納しておき、溶接施工時に溶接状況を検出または入力し、これに合致する溶接条件をデータベースから抽出後、その値を各機器に出力(指令)する方法である。

ここでは、板厚は溶接前にキーボードから入力し、溶接姿勢角度と溶接開先幅は溶接機に取り付けられた傾斜センサと開先倣いセンサから溶接施工時にリアルタイムに取り込む。そして、溶接データベースの中から取り込まれた溶接状況値(溶接板厚、溶接姿勢角度および溶接開先幅)に合致する溶接条件を抽出する。溶接状況値が合致しない場合は、データベースの中から取り込まれた溶接状況値に近い上下2つの溶接条件を抽出し、この2つの溶接条件を直線補完して取り込まれた溶接状況に見合った溶接条件を作成する。データベースより作成された溶接電流と溶接電圧は溶接電源に指示し、溶接速度は移動車に指示して溶接条件を自動的に変更する。

 

b. 検出〜溶接条件出力・実行・フィードバックに至る遅延制御

リアルタイムに溶接条件を制御するには、データベースから溶接条件を抽出する際に使用する溶接状況値(溶接板厚、溶接姿勢角度および溶接開先幅)が溶接トーチ部の状況でなければならない。

しかし、溶接開先幅は溶接トーチより前方に取り付けられた開先倣いセンサで検出されるため、検出された開先幅は溶接トーチ部のものと異なる。この問題の対策として開先幅の遅延制御方法を検討した。

図1.8.2に開先幅の遅延制御の概念図を示す。

 

 

 

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