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6.3 知的エージェント技術による新しい設計協業環境

高度造船CIMは、PMとプロセスモデル、それに、ネットワーク上に分散したアプリケーションを、最新の分散オブジェクト技術で緊密に連携させることによって、従来にない高度な情報・知識共有を実現するものである。

複数の設計者が、高度造船CIMの環境下で設計チームを組んで業務を進めるに当たり、この協業作業を円滑に行うための潤滑油的メカニズムとして、新しい情報技術である知的エージェント技術を導入した。エージェントは、設計者間の通信の仲介という単純なものから、文字通り、人間の様々な行動を賢くサポートする高度な機能まで、実現できる可能性を秘めたソフトウェアである。各作業者のコンピューターには必ずエージェントが存在し、その支援を受けながら、人間とエージェントが協調して作業を行うことになる。この知的エージェント技術によって、高度造船CIMでは以下に示すような新しい設計協業支援のシステム的枠組みの実現を目指した。

(1) 設計作業における協業支援

(a) システム的な特徴

エージェントはプロセスモデルを参照し、あらかじめ定義された業務プロセスに沿って、設計チームの作業が進行するよう、適切なアドバイスを設計者に与えて、進捗遅れの設計者に注意を喚起する。

(b) 実現レベルの評価

プロセスモデルと、エージェント支援に基づく協業支援システムの基本部分を開発し、作業進捗遅れに対する警告メッセージをエージェントが発する機能や、自分の設計作業に関連する設計者の作業情報を、エージェントが自動提示する機能などの基本機能を実現した。この基本機能とごく基礎的な知識を注入したエージェントを利用した、協業支援システムのプロトタイプを開発して機能評価を行ったところ、このレベルの機能でも設計者のコミュニケーション支援には有効であり、エージェントの知識を高度化することによって、より知的な協業支援が出来る可能性が確認された。このエージェントへの知識の注入、設計者への有効なアドバイス提示など、高度な機能の実現に至る検討は、今後の研究開発に委ねられる。

(2) 設計作業の信頼性向上

(a) システム的な特徴

エージェントは、高度造船CIMのシステム環境で作業する、人間の操作や設計チーム間の情報交換を全て監視しており、どの設計者間の作業が関連しているのか、設計者が作業しているPMのどの部分に関係があるのかを知っている。それで、ある作業者が設計変更を行った場合、エージェントは関連作業者に、漏れなく設計変更があったことを自動的に連絡するので、整合性が確保された設計が可能となって、信頼性が向上する。

 

 

 

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