日本財団 図書館


6.2 協業作業を支援するプロセスモデル

PMが船という製品に関する情報と、基本的な制約条件などの製品知識を表現するのに対し、プロセスモデルは、その対象物にどのように働きかけるかという行動、すなわち、業務プロセスに関する情報と知識を表現するモデルである。すなわち、PMが主として設計結果を表現するのに対して、プロセスモデルはその設計結果に至る手順という時間軸上の情報を表現する。高度造船CIMでは、造船の高度な協業作業を支援するため、従来の造船CIMには無い、プロセスモデルを新たに導入して、PMと並んで中核的モデルと位置付けた。

プロセスモデルの持つ特徴と、それに対する実現度は次の通りである。

(1) 細かいモデル粒度

(a) システム的な特徴

市販のワークフロー管理システムは、主として定型的な業務フローの表現と、それに基づいた進捗管理を対象として、比較的粗い粒度のプロセスモデルとなっている。

これに対し、提案したプロセスモデルは、進捗管理レベルの業務フローの表現はもちろん、設計ステージで発生する、設計者間の複雑な協業作業を表現できる、より細かい粒度のプロセスモデルを狙っていて、市販ワークフロー管理システムでは困難な、設計チームの複雑な協業支援を実現できる。

(b) 実現レベルの評価

市販ワークフローソフトウェアでは希薄である、設計協業作業の支援という視点から、プロセスモデルのあり方を検討した結果、非常に斬新な設計協業支援のためのプロセスモデルの概念を提案することが出来た。具体的には、市販ワークフローモデルと同等の粒度レベルであるアクティビティの概念に加え、詳細作業手順を表現するワークエレメントの概念を導入した。こうして、市販ワークフロー管理システムでは困難な、設計チームの複雑な協業支援を実現する基本モデルを提示できた。しかし、製品情報を表現する、言わば静的なモデルであるPMに対するモデル化技術はほぼ確立しているものの、プロセスモデルは、設計・生産に関する人間の諸活動を対象とする動的なモデルであり、そのモデル化に関する研究開発は現在も活発に行われている分野で、今後の研究成果を織り込む必要がある。また、プロセスモデルを活用した協業作業支援の実現には、エージェント機能との連携が有効であることが示された。本開発研究で実現したエージェントは、設計者間のメッセージ交換を円滑に、かつ、漏れなく伝達するという基本的な機能を持つもので、利用している知識はごく単純なものではあるが、この機能レベルでも緊密なコミュニケーションが要求される、設計者の協業作業の支援に寄与できることが分かった。エージェントにより高度な知識を注入すれば、高度な協業支援が可能となる。一方、より高度な支援を行う際、エージェントが持つ情報・知識とプロセスモデルに保持する情報・知識との分担はどうするかといった課題も提示された。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION