(a) 内側のループ(設計者同士の協業ループ)
個々のエージェントが保持する、各設計者のワークエレメントと依存関係情報に従って、設計者同士の情報交換及び設計者の作業自体をエージェントが支援するレベルが、内側のループである。
(b) 中間のループ(マネジメントのループ)
マネジャーが、定義したアクティビティを各担当者ヘ割り付け、エージェントを経由してアクティビティの進捗管理を行うレベルが、中間のループである。もちろん、マネジャーは、エージェントを通してワークエレメントレベルの進捗情報を参照することが出来る。
(c) 外側のループ(プロセス改善のループ)
プロジェクトの終了後、エージェントが保持するワークエレメント同士の依存関係、プロセスサーバーが持つ実績プロセス情報を基に、より効率的なプロセスに改良し、プロセスリポジトリに格納するレベルが、外側のループである。
4.3.2 エージェントの機能と協業支援システムでの実装範囲
(1) エージェントの全体構成
エージェントは近年盛んに研究されている新しい情報技術であり、自立的にシステム間の相互運用支援や、設計者の知的な支援を行うことが大きな特徴である。エージェントは、知識ベースと推論機構を持ち、ルール形式で表現された知識をベースに推論し、自らの行動を決定する知的エージェントである。定型的な処理に関しては自動実行するが、基本的には、設計者のアシスタントとなるように意思決定を支援するもので、意思決定に必要な情報の提供、例えば他の設計者の状況、過去の事例、取り得る手段の候補リストの提示等を行うものである。エージェント技術は、エージェントが設計者に対して次々に提案する内容を評価し、それが持つ知識の修正を図ることによって、将来的には設計者を高度に支援できるシステムに発展可能なシステム的枠組みで、エージェント技術をプロセスモデルによる協業支援の仕組みを実現するための中核的な技術として位置付けている。
図4.3-2は本開発研究におけるエージェントの機能構成を示したもので、他のエージェント、あるいはユーザーアプリケーションプログラムとの通信機能、メッセージ処理機能及び推論機能から構成される。