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また、エンジニアリングレベルのプロセスについても、造船業は成熟した産業で定型化された作業が多いことから、標準的なプロセスはある程度記述することが出来る。

プロセスは時間の関数であり、プロジェクト開始前に設計したプロセスP(t=to)は、プロジェクトの進行に伴って発生する、情報の詳細化や変更、あるいは、前工程の進捗遅れ等、種々の要因によって修正(必要な作業や作業の実行順、依存関係等)を余儀なくされる。

特に、アクティビティ同士の依存関係は複雑に変化し、プロジェクト開始前には記述されていなかった多数の依存関係が発生する。これらの依存関係は、プロジェクトで発生する様々な問題に対処するために必要な調整作業を表現するものと考えられる。

更に、一つのアクティビティの作業単位を細かくすると、アクティビティ同士の依存関係はより詳細かつ複雑になる。また、プロジェクトの進行に合わせて変化する度合いも高まる。

マネジメントレベルのプロセスは、一つのアクティビティの作業単位が比較的大きく、プロジェクト開始前に設計したプロセスは大きく変化せず、変更の頻度もそれほど多くない。

一方、エンジニアリングレベルのプロセスは、発生する問題(例えば設計変更)の種類や、問題の発生個所、あるいは、エンジニアのおかれた状況(要求事項)等の違いによって動的に変化(実行すべきプロセスや実行順、更には、プロセス同士の依存関係が変化)するため、プロセスの記述の変更や、プロジェクト開始前にプロセスを記述すること自体が困難になる。当初、式4.2-1のプロセスモデルを使って、エンジニアリングレベルのプロセスの記述を試みたが、前述の原因により断念せざるを得なかった。

それで、式に示したプロセスモデルは一つのアクティビティの作業単位が比較的大きいために、プロジェクト開始前に記述したプロセスが大きく変化しない、マネジメントレベルのプロセスにのみ適用できるプロセスモデルと言える。

 

4.2.4 ワークエレメントによるプロセスのモデル化

前述のように、プロセスモデルはアクティビティの作業単位を詳細化し、プロジェクトの進行に合わせて、より複雑、かつ頻繁に変化するエンジニアリングレベルのプロセスを十分記述できない。それで、以下に述べるワークエレメントと呼ぶ、アクティビティ内部の個々の要素作業を表す概念を使って、エンジニアリングレベルのプロセスをモデル化した。

マネジメントレベルのプロセスの構成要素である一つのアクティビティは、式4.2-1の定義から式4.2-2のようにも表現できる。

a = { o, d, u, q}..............................式4.2-2

o:作業(action)

 

 

 

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