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(3) 外側のループ(Enterprise Learning Loop:プロセス改善のループ)

実績プロセスを基にして、既存のプロセスの改善や、新規のプロセスを設計するループである。標準作業手順の作成等、主に個々の設計作業の効率や質の向上を目的とした、内側のループで扱われるプロセスの改善と、プロジェクトを円滑に進める(協業をスムーズに進める)ことを目的とした、中間のループで扱われるプロセスの改善がある。

次に、設計業務において、これら3つのループによるプロセス情報がどのように運用されているかを、図を参照して述べる。

マネジャーは、標準的なプロセスを保管した格納庫であるプロセスリポジトリから、対象とするプロジェクトにもっとも近いプロセスを選択し、これに対象プロジェクト特有の制約条件などを勘案して修正を加え、更に、プロセスを構成する各作業の開始・終了日や、担当者等の必要な情報を設定して、プロジェクトの目標プロセスを設計する。

目標プロセスは一般的にワークフローと呼ばれるものであるが、ここでは、具体的な担当者や日程情報が設定されていない一般的な業務手順をプロセス、担当者や日程情報が設定された業務プロセスをワークフロー(プロセスをインスタンス化したものがワークフロー)と、区別して表記する。

具体的な目標プロセスが設計されると、マネジャーからの実行指示に従って各設計者は作業を開始する。マネジャーは設計者からの進捗報告等(監視・報告)によってプロジェクトの進捗状況を評価し(評価)、遅れている作業の担当者にアドバイスするなどして、目標プロセスに沿ってプロジェクトが進むよう管理する。遅れが大きくなった場合には、増員や日程変更、更には、作業の実行順序の変更等、目標プロセスを修正(プロセスの修正)する場合もある。図の中間のループは、このようなマネジャーによる進捗管理のサイクルを意味している。

一方、作業を割り当てられた設計者は、他の設計者と緊密な情報交換(監視・報告)を行いながら作業を進めており、ここでは、目標プロセスで設定されているよりも細かい作業単位で協業が行われている。図の内側のループはこれを意味しており、刻々と変化するプロセスの実行状況に応じて、設計者間の相互調整が繰り返し行われる部分である。

なお、通常マネジャーは中間のループのレベルで、プロジェクトの進捗管理を実施しているが、必要に応じて内側のループで扱われる詳細なプロセス情報を監視し、このレベルで詳細な進捗管理を行うことも可能である。

図の外側のループは、プロジェクト終了等の適当なタイミングで、実績プロセス情報を基にしたプロセスの改善作業(学習・改善)を意味している。目標プロセスを設計する際に利用する標準プロセス情報や、より効率的な標準作業手順が設計され、プロセスリポジトリに格納される。

 

 

 

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