マネジャーは進捗状況の把握と、遅れに対して効果的な手を打つため、詳細な進捗状況を個別に聞き回っている
このように、高度造船CIMの協業支援機能へのニーズとしては、進捗管理、情報の収集や変更通知の徹底、更には、業務知識の共有といったものがあり、これらに適切に対処することによる設計効率化が強く望まれている。プロセスモデルの設計に際しては、これらのニーズを考慮して検討を実施した。
4.1.3 現状のワークフロー技術の限界
昨今BPRの必要性が高まるとともに、業務プロセス管理(ワークフロー管理)の必要性が提唱されようになり、この動きに合わせて、システムベンダーは各種のワークフロー管理システム製品を世に送り出し、それぞれ固有のプロセスモデルを実装している。これらは一般のビジネスプロセス、あるいはエンジニアリングプロセス(設計・工作の業務プロセス)を、コンピューターが解釈可能な形で表現したモデルである。
通常、プロセスモデルは一連の作業(アクティビティ)のネットワークとそれらの関係情報、プロセスの開始・終了時間及び開始・終了に関する条件、各作業の担当者や関係する作業者、更に、その作業で使用するアプリケーションやデータなどの資源情報へのリンク情報等から構成される。
現在市販されているワークフロー管理システムの多くは、主として定型的なビジネスプロセスの管理を対象としており、これに必要な詳細度でモデル化されている。また、事前に作業プロセスが完全に記述され、作業開始後も順序関係が変化しない静的なモデルとして定義されることを前提にしている。一方、本開発研究で目標としている設計者同士の高度な協業作業を支援するためには、市販ワークフロー管理システムより細かい粒度で、業務プロセスを表現できるモデルの構築が必要である。この粒度の作業手順は、現実の設計作業においては、作業開始後、様々な要因により事前に定義した設計手順が動的に変化する性格のものである。前述のように市販ワークフロー管理システムでは、業務プロセスは事前に全て定義されることを前提としていて、本質的に試行錯誤を伴って動的に変化する設計業務への適用は困難で、造船業のような高度な協業作業を支援するためには、新たなプロセスモデル及びそのモデルと緊密に連携し業務プロセスの動的変化に追従できる仕組みを持つ協業支援システムを開発する必要がある。
4.1.4 開発目標と方針
上記のような造船の高度な協業作業を支援できる、市販ワークフロー管理システムは存在せず、プロセスモデルに基づく新しい協業システムの研究開発が必要であることが分かった。プロセスモデルに関する情報技術は、現在その研究開発が精力的に行われている分野で、適用技術は未だ十分確立しているとは言えない。