日本財団 図書館


しかし、情報面から見るとPMは基本的に製品の設計結果を残したものであり、どのように設計がなされたか、更には、設計者の作業がどのような手順で、いつ行われるべきか、互いの設計作業がどのように関連しているのかという情報に関しては、製品構成上の関連情報など、その一部はPMに保持しているものの、原則的にPMの守備範囲外である。

プロセスモデルは、この後者の情報と知識、すなわち、設計・工作業務プロセス(作業手順)に関する情報と知識を表現するモデルであり、設計チームの作業計画と進捗情報の共有や、設計協業支援システムの構築を可能とする。すなわち、造船の高度な協業作業を効率良くシステム的に支援するためには、PMとプロセスモデルの両者をつなげる協業支援システムの構築が必要である。

 

4.1.2 協業を進めるうえで造船所が抱える問題点

さきに述べたように、造船業は高度な協業作業が要求される産業で、各造船所の設計現場では全てが人間系の調整によって進められている。しかし、現実には設計変更の連絡漏れや、関連作業の進捗情報不足による潜在的な作業待ちなどが内在しており、システム支援による協業作業の効率化が望まれている。プロセスモデルによって改善が期待される現状の課題を整理すると、以下の通りである。

(1) 情報収集や変更管理に関する課題

・作業の手戻りを防ぐため、自分の業務に関連する作業の進捗や作業の内容を常に確認する必要があり、作業に必要な情報収集に時間がかかる

・設計者間では、情報が未確定な段階から広範囲にわたって情報交換や調整作業が行われる。それで、設計が進み情報の確定度が上がるにつれて、互いの設計情報の更新や修正作業が日常的に発生し、また、コミュニケーションが不十分な場合には矛盾が生じることもある

・チームとして設計するので、設計者同士で情報を参照し合うが、互いの情報の依存関係が複雑に入り組んでいて、十分に把握しきれないので、変更通知が不十分であったり変更個所の周知徹底に時間がかかる

(2) 設計知識の共有に関する課題

・情報の確定度が低い段階では、過去の類似船の情報を参照したり、経験による予測に基づいて作業を進めることが多い。また、変更への対応手順は文書化されておらず、ノウハウとして各設計者の頭の中にある。結果として設計者の経験や知識によって作業能率が大きく左右される

(3) 進捗管理に関する課題

・一般に造船所の設計進捗管理は図面単位で行われているが、設計者同士の情報交換や調整作業が同時並行的に行われるため、図面等最終的なアウトプットが出る前段階での進捗管理が難しい。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION