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2.4 エージェント技術の適用

エージェント技術は、ACIMリファレンスアーキテクチャのACFカテゴリーに含まれるファシリティで、本開発研究が目指す協業支援環境を実現するうえで、必須のものと位置付けている新しい情報技術である。この技術は現在盛んに研究され、発展中のものなので、導入に当たっては、以下のようなアプローチを取った。まず、エージェント技術について広く調査し、その一般的な特徴を明らかにし、次に、エージェント技術を高度造船CIMにどのように適用して行くかについて具体化を図り、造船における実業務のある場面を模したシナリオに基づいて、プロトタイプを作成して有効性を検証するとともに、問題点を洗い出し、最終形態として高度造船CIMのシステム基盤技術として組み込んだ。

ここでは、エージェント技術の一般的な特徴を概説した後、プロセスモデルに基づく協業支援を実現するためエージェント技術が果たす役割について、エージェントが持つ特徴との関係という視点から述べ、分散オブジェクトシステムの効率的運用へのエージェント技術の適用についても触れる。

 

2.4.1 エージェント技術の一般的な特徴

エージェントは、ソフトウェアエージェントや知的エージェントとも呼ばれ、これについて統一された定義があるわけではなく、研究者の数だけ定義があると言われる状況で、それらに共通するエージェントの特徴は以下の通りである。

1]自律性:

人間の直接の介入なしに振る舞うことが可能であり、自身の動作や内的状態を何らかの形で制御できる

2]社会性:

ある種の通信言語を介して、他のエージェント(人間の場合もあり得る)と通信する

3]反応性:

環境(現実世界であったり、グラフィックスインタフェースを介したユーザーであったり、インターネットであったりする)を知覚し、その変化に即時に対応する

4]積極的な行動:

環境に単純に反応するだけでなく、自身の有するゴールを指向して動作する

5]知的判断:

知覚した事象を解釈し、自分自身の適切な動作決定を行うため、あるレベルの知識を活用する

このようなエージェントの特徴を形作るうえで、重要な要素となっているのが通信である。エージェントは、効果的な通信言語機構を用いて他のエージェントと通信し、自身を取り巻く環境についての必要な情報を獲得することによって、自律性を発揮する。

 

 

 

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