(2) CORBAの最新動向
CORBA仕様の拡張は引き続き行われており、CORBA3.0では、非同期通信(サーバーの処理結果を待たずに次の処理を開始できる)、CORBAコンポーネントの開発を促進するための整備がなされた。今後、この仕様に準拠したサービス群が、市販CORBA製品に組み込まれて行って、分散オジェクト環境をより容易に構築できるようになると期待される。
また、CORBA適用事例は着実に増加しているが、現状を概観すると、その適用分野はインターネット上の分散環境の基盤としてよりも、どちらかというと、社内や部門内の比較的狭い範囲での、既存システムと市販汎用アプリケーションとの密結合システム構築への適用が主体となっている。その理由の一つとして、異なるCORBA製品同士の完全な相互運用性が、現時点では十分確保されていないことが挙げられる。本開発研究で利用したIONA社のCORBA製品であるOrbixだけが市販ツール(PDM、 ERP等)との連携が可能で、事実上の標準CORBA製品となっている。
一方、分散環境の舞台は現在(そして今後とも)インターネットになっている。それで、CORBAも、CORBA3.0のような公的な規格に加え、市販製品は、いずれもインターネットの諸技術、とりわけ Java、EBJ、 XMLとその関連規格、 HTTP、 Web サーバー、Web ブラウザなどとの連携を考慮している。これにより、今後は、プロセスの密結合が要求される仕様に適しているCORBAと、世界的規模の粗結合(ルース)なシステム連携に適しているインターネットの技術が有機的に組み合わされることで、一層柔軟で高性能のアプリケーション構築へ向けての、展望が開けてくるものと期待される。
(3) DCOMの概要
(a) DCOMの特徴
マイクロソフト独自の分散オブジェクト技術仕様であるDCOMは、「ソフトウェアのコンポーネント化による、アプリケーションの品質と生産性の向上」を主な目標としている。同社は、”COM is everywhere”という戦略に沿って、あらゆるソフトウェア(究極は、OSまで)を(Distributed)COMコンポーネントの組み合わせに置き換えようとしている。CORBAと比較してDCOMは次のような特徴を持っている。
(ア) 仕様の独自性
同社の独自仕様であり、実装仕様まで規定している。
(イ) バイナリー互換性の確保
CORBAがIDLを介してオブジェクト間のインタフェースを取るのに対して、DCOMでは実行形式(バイナリーファイル)で、直接クライアント側とサーバー側のコンポーネントがインタフェースの整合を取る仕組みとなっている。
(ウ) マルチメディア情報への対応
DCOMではマルチメディア情報(音声や動画データ)への対応が可能である。