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しかし少数派とは言え大国ロシアの政治的、経済的支配を警戒し反ロシアの姿勢を次第に明確にする動きもあり、経済・政治におけるロシア離れの動向は、NSRにとって、ポジティブ、ネガティブ、両面の影響があることから、今後のCISの動向を注目する必要がある。

 

全ての商業航路は、それが海運業界において必要であるが故に啓開され、利用される。ロシアが、あるいは関係国が、理論上、あるいは国策上の要件だけで、商業航路を啓開することはできない。スエズ経由航路に比して、所要航行日数において、採算性において、安全性において、十分競合でき、かつスエズ経由では果たせ得ない運航ポイントを海運業界に提示し得て初めてNSRが認知される。NSRは、変化の激しい海運業界の動向に合わせて、変幻自在とまでは行かないにせよ、フレキシビリティのある航路運営を前提とするものでなければならない。

 

北極圏は、地球環境を理解把握する上で重要な地域であり、今後北極圏における様々な観測調査が必要とされている。これらの学術的な調査活動は、NSR啓開への新たな情報を提供するばかりでなく、北極海域での科学調査活動そのものが、過酷な自然条件へのアレルギーを解消し、自然環境・生態系への慎重な配慮と、十分な準備、用意さえすれば、この海域が決して人間の社会活動を拒むものではないことを立証してくれる筈である。

ただし、このような学術調査を担う北極域海洋観測船についても、NSR運航規定が課せられることは留意しなければならない。

 

INSROP(International Northern Sea Route Programme)(巻末資料1)は、日本、ロシア、ノルウェーの3カ国協力により、北極海航路啓開の要件を明確にする目的を以って計画され実施された事業であるが、国際協力の背景はそれぞれであり、ロシアは社会経済活性化を、ノルウェーは海洋環境データの整備、日本はロシア・データの開示と入手を、事業の結果として得られる成果として期待し、3カ国それぞれが連動する国内研究計画や他の国際研究事業と関連させて実施したものである。

北極圏の陸上の問題についてはいささか調査検討手薄の感は否めないが、本務である北極海に関る研究資料としては、現在最も充実した研究成果として評価され、特定の物資輸送路としての関心、期待や、航路そのものに関心の薄い研究者、地球・海洋物理学者、民俗学者等からも貴重な研究成果として高い評価を受けつつあり、20世紀末を飾る研究成果として21世紀に受け継がれるものと思われる。

しかし、北極海航路啓開の可能性評価については、残念ながら、確たる結論が得られていない。これも現在及びここ当面のロシア事情を勘案すれば、むしろ当然の帰結とも言える。ただし、航路啓開可能性の鍵を握るロシア側の関係事項が、どの方向であれ、決定的なものとして呈示されれば、INSROP研究成果を活用して、商業航路としての妥当性は速やかに、かつ容易に検討することができる。

 

 

 

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