SSM/I画像は本航海で非常に有用であったものの、その空間解像度は25kmと粗く、詳細な情報は得られない。これは本来、日単位以上の中・長期的航路決定のための支援やSARの詳細情報取得のための補助的情報に用いるべきものである。SARについては、RADARSATやICESTAR計画による広範囲の画像を活用すれば、その有効性は深まる。データ取得手続きの融通性の向上、現場データの蓄積による、SAR信号から氷況に変換するためのアルゴリズムの確立などが、今後の課題である。ロシア航行官制所からの、豊富な経験に基づく氷況情報は非常に信頼できるものであるが、現在のロシア内の混乱による情報の少なさが問題である。氷況情報は氷海航行に必要不可欠なものであるから、これらのインフラ整備は大変重要な課題である。
(6) 氷海航行における情報の重要性、特に氷況情報の重要性が再認識された。しかしながら、ラプテフ海の大部分で、インマルサット衛星による通信が不可能になる(図4.2-10)。この問題を解決するためには、ロシア沿岸の通信設備の充実が必要である。また、実際の商業的運用を考えると、出港前にNSRを選択するか南回り航路を選択するかの決定をする必要があり、そのためには、航行1カ月前にはNSR全体の氷況情報と予報が必要である。これらは責任ある公的機関により成されるべきである。