4.6 地理情報システム
4.6.1 はじめに
地理情報システム(Geographic Information System : GIS)とは、コンピュータ上のデジタル地図をビューアとしたデータベースシステムである。身近な所では自動車のカーナビも、地図の上に経路を表示したり、データベースとして持っている指示音声を選択してスピーカーから流したりと、データベース機能を持っているので、GISの一種である。しかし、専門的なGISは、それよりも高機能で、フレキシビリティを持っており、パソコンまたはワークステーション上で動作する汎用ソフトである。INSROPでは、当初からGISに注目し、NSRに関わるロシア側北極海を主としたデータの収集と、より使い易いシステムの構築を行ってきた。これをINSROP GISという。すなわち、INSROP GISの狙いは、以下の通りである。
(1) 北極地域・海域の開発及び利用計画の策定や、北極海航行における航路選定・決定をするためには、容易に活用できるこの地域の情報システムの整備が望まれている。
(2) 一方、広大な領域で多岐に亘るトピックスの情報選択にあたり、質の高い意志決定ができる情報としては、地図や写真を活用したGISが有効である。
(3) INSROP GISは、上記の観点からNSR地域及び北極海の地理データを可視化し、その検索・解析等を容易に行えるようにして、ユーザに体系化されたINSROP情報を提供する。
ここでは、INSROP GISと、その使用例を簡単に紹介する。
4.6.2 システムの特徴と構成
本システムの特徴は、以下の通りである。
(1) 地理情報とリンクして、ビジュアルで分かりやすいデータ及び解析結果が得られる。
(2) 日本・ノルウェー・ロシアの共同研究開発により、北極海(特にロシア側)に関する豊富で質の高い環境データが収録されている。
(3) 北極海域の任意点における必要な環境データが、容易に検索・解析できる。
(4) 本システムにより得られた各種環境データを用いて、環境汚染影響や航路計画や構造物設計の各種シミュレーションへの利用が期待できる。
(5) 本システムは、通常のパーソナルコンピュータで動作し、操作が容易である。
(6) 基本システムに有名な市販汎用GISソフトArc Viewを使用し、他のソフトウェアとのリンケージなど、汎用性に優れる。
本システムの全体構成を図4.6-1に示す。INSROP GISのソフトウェアとデータはCD-ROMで供給されるが、このシステムはArc Viewをカスタマイズしたものであるため、パソコンにはArc View 3.0がインストールされている必要がある。ハードウエアとして、データベース操作に十分な容量のハードディスクとメモリを搭載したWindowsマシンが必要である。
本システムは、北極海からロシア北部の地理データ・自然環境・航路・生態系などのデータベース群と、これらを検索・解析したり、新テーマを生成・定義付けたり、保管・印刷する等の処理機能と、これらをビジュアルにウィンドウ画面上に表示させるビュー・テーブル・チャート等の画面処理機能に分かれている。