(3) NSRにおける影響因子(Impact Factors)の抽出
全ての環境因子は通常の運航(Operational)または事故(Accidental)に結びついていると言う基本的な前提に立てば、NSRの活動は、以下の3つの要素の1つまたは2つ以上に関連している。
●砕氷船の支援を含む船舶そのものの活動
●港湾施設(貨物の貯蔵、荷揚げ設備、燃料、クルーの支援設備、汚物の受け入れ設備)
●貨物およびクルーに対するインフラストラクチャ
上記の最初の要素は海上、最後の要素は陸上ベースのものであり、港湾施設は陸上、海上の中間に位置するものである。更に、以上の主たる活動は、幾つかの現場における特定の活動(Specific Activities in situ)に分類される。環境に対して作用する機構は以下の5つのカテゴリーに分類される。
●空気への放出(Emission to air)
●物理的な外乱(Physical Disturbance)
●海、氷、陸上への排出(Discharge release to sea, ice and(or)land)
●騒音(Noise)
●発育パターンの変化(Changes of development pattern)
上記のカテゴリーは船舶について分類したものであり、港湾施設、インフラストラクチャについての環境因子はThomassen et al.(WP-162)を参照されたい。船舶についての影響因子を通常の運航、事故について纏めたものを表4.5-4に示す。こららの環境因子をベースに環境影響評価を行うことが可能である。その概要については、4.5.4節に解説する。
4.5.4 環境影響評価
環境影響評価(Environmental Impact Assessment)は、一般的に見解の相違からしばしば混乱が生じ易い問題である。開発側、環境保護主義者などの間で、影響の深刻性を巡って長時間の議論を要する問題でもある。見解の相違もあるが、用語の統一性を欠いていたり評価プロセスに透明性がなく、評価手法そのものの信頼性が乏しいのも一因である。従って、環境評価の原則と実際の手法を明確にして置くことが大切である。NSRの環境影響評価は、大きくは次の3つの要素に分けることができる。1]については、既に4.5.3節で、2]については4.5.2節で解説した。3]の環境影響評価は1]が2]に与える影響を定性的、定量的に評価する手法であると言える。
1]NSRにおける船舶の運航が与える影響因子(Impact Factors)の洗い出し
2]重要度の高い生態系要素(Valued Ecosystem Components)の定量的分布把握
3]環境影響評価の実施