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表4.4-15 50BC、1987年の年間運航シミュレーションの事例

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まとめ

NSRの運航コストに最も大きな影響を与える因子は資本費である。砕氷能力を向上させると、主機馬力、船殻重量も増加し、資本費が大きく増加する。40BCと50BCの載荷トン数あたりの年間資本費を比較すると前者が207$/ton/year、後者が72$/ton/yearである。約3倍の違いがある。砕氷能力を上げたために、40BC建造費用が50BCの約2倍要することが原因である。資本費と砕氷能力については、対比して考える必要がある。40BCと50BCの砕氷船のエスコート日数は冬期が最も差異があるが、1航海について最大で2日程度であり、夏期は殆ど差がなくなる。船速が3ノット以下になると直ちに砕氷船のエスコートが得られると仮定したことが影響していることは否めないが、40BCの砕氷能力の優位性が発揮できない結果となった。砕氷船がエスコートに現れるまでのスタンバイ日数が数日を要するようであれば、40BCが優位な結果になることも考えられる。現在、ロシアが提案しているように砕氷船のエスコート費用がその日数に拘わらず、定額で確実に砕氷船の支援が受けられるようであれば、砕氷能力は中程度として、平水中の性能を向上させることが得策と言える。砕氷船のエスコート費用については、本シミュレーションで提案しているように、50BCのハンディサイズバルカーで5$/GT程度が実現できれば、トランジットでは、夏場は十分、スエズ運河を通る通常のハンディサイズバルカーに対して競争力を有しているものと思われる。通年で見れば、NSRを季節的に利用する場合も、スエズ航路を通るハンディサイズバルカーと比較すると、10%程度割高の結果となる。ただし、冬期はNSR通行中の約7割程度が砕氷船のエスコートを受けることになり、現在、ロシアが提案しているような定額によるエスコートが非現実的なものとなろう。一方、地域航路について見れば、25BCはほぼ通年航行が砕氷船のエスコートなしで可能である。このような場合でもNSRの通行料を支払う必要があるのか疑問の残るところである。エスコート時間当たりとするか定額とするかなど、砕氷船のエスコート費用の課金方法は、本シミュレーションのような考察を得て設定されるべきで、現在の設定方法には疑問が残るところである。

 

 

 

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