その他
●ロシア政府発行の海図を具備していること。
●保証の義務として「海洋と沿岸汚染に対する民事責任に対して十分な財政的な保証ができる証明書がない船舶は通航が許可されない」と規定している。具体的には通航に対し十分な保険が必要であることを規定している。
4.3.5 通航の管制と航路選定
"Regulations for Icebreaker and Pilot Guiding of Vessels through the Northern Sea Route"に運航規則を定めている。主たる規則を以下に要約した。NSRを通航する船舶は、運航管制所の指示に従うことを義務づけられていることが特徴である。
●通航する船舶は、管制所が指定する航路を通航する義務を負う。
●東経125度以西のNSRはディクソンの西運航管制所(West Marine Operations Headquarters)が、それより東側はぺベクの東運航管制所(East Marine Operations Headquarters)が航行船舶を先導(Guide)する。
●先導には運航官制所の判断により、氷況に応じて、陸上からの航路の指示、乗船したパイロットによる先導、氷況マップの供給、航空機・ヘリコプターによる先導から砕氷船による先導など、幾つかのレベルに分けられる。従って、常に砕氷船の先導が受けられる訳ではないことに注意する必要がある。ただし、ビルキツキー海峡、シヨカルスキー海峡、ドミトリーラプテフ海峡、サニコフ海峡の4つの海峡は、氷況が厳しく航海の難所であることから安全性を確保するために、砕氷船の先導を義務づけられている。
●東経125度までの西側はムルマンスク海運会社が、その東側は極東海運会社がエスコートする砕氷船を提供する。
●NSRに入る日時を事前通告すること。
●コンボイの選択も運航管制所の判断による。
●コンボイに入る場合は先導する砕氷船の管制下に入る。
●航行管制所が指示した先導の方法を船長が拒否した場合は"Regulations for Navigation on the Seaway of the Northern Sea"の第7条の指示違反に該当し、同10条に従いNSRからの退去を命令される。退去に伴う費用は該当する船舶が支払う必要がある。
●砕氷船と出会う場所も運航管制所が指示する。
●船位置を1日2度、運航管制所に報告する。
●運航管制所の指示はロシアの海図と海事出版物による。従って航行船舶はロシアの海図とその改定指示書を携行する必要がある。
●NSRの航海情報の変更は航行管制所及びディクソン、アムデルマ、チクシ、ぺベク、シュミット岬のラジオ局を通じて通報される。
●運航官制所を通じて伝達される国防省が発令する沿岸域の警告(PRIP)の通告を無視した船長は、困難な状況下で予期できない状況であったと申し立てをすることが出来ない。
●航海の妨げにならない開水中を航行した場合も、船長は指示された航路から大幅に外れてはならない。指示された航路を外れて困難な氷況、浅水域などに入った場合、速やかな支援は期待できない。