船舶検査
北極海航路局は申請を受理して10日以内に、船舶検査の必要性を含めて通航の可能性を回答する。船舶検査が必要な場合、検査は船主の費用によりムルマンスク、ナホトカ、プロビデニヤ、または船主が希望する港で実施される。船舶がNSRの通航に必要な要件を全て満たさない場合は割り増し料金が必要となるが、砕氷船支援を通常よりも強化することを条件として許可される場合がある。船舶以外の浮きドック、海洋掘削リグ、浮き桟橋や他の浮き構造物を通航させる場合は、割り増し料金を支払うことを条件に許可される。
4.3.3 船舶の技術的な要件
前述した"Guide to Navigating through the NSR"に併載されている通航船に対する設計、装備要求の規則(Requirements for the Design, Equipment and Supplies of Vessels Navigating the Northern Sea Route)には、NSRを通航する船舶の技術的な要求が記述してある。主な要求事項は以下の通りである。
一般要求
●NSRを通航する船舶はロシア船級協会の最上位の耐氷クラスであるULAから次のUL、L1までのクラス、または他船級協会の同等のクラスに適合する必要がある。ロシア船級協会と外国船級協会のクラス間のおおよその対比は表4.1-1を参照されたい。
●L1は氷況が良好であれば夏期、砕氷船の支援下、東経125度以西のNSRまたは以東の特定区間を航行できる。
●砕氷船の航行は、当局側が個別に砕氷能力を判断し決定する。
●L2クラスの航行は夏期のみ氷況が良好な場合のみ、当局の判断により例外として許可される。ただし東側NSRの航行は許可されない。
構造
●全ての船舶は二重底を有することとし、二重底と二重殻内のタンクに石油類または汚染物質の積み付けを禁止する。
●5,000重量トン以上のタンカーは、外殻から0.76m以上の場所にタンクを設ける事、また二重底と二重殻内のタンクはバラストまたは空とする。
●船体の形状は氷海航行に好適な形状とし、ロシア船級協会の推奨するものと異なる場合は当局の許可が必要である。バルバスバウのような船首形状は許可されない。
●1981年以前の規則により建造されたロシアの国内船は特別の審査を行う。
●砕氷船のスターンノッチ(図4.1-10)に、曳航される耐氷船の船首部を嵌め込み、砕氷船の船尾部と耐氷船のボラードを曳索にて固縛し曳航する、クローズトーイング(Close towing)を確実に行うために、耐氷船の船首部船体は補強のためにフレームを増設し、曳索を取り付けられる構造とする。
機関部
●主機の反転またはCPP翼の全力前進から後進までの切り替えが45秒以内に可能なこと。
●後進出力は前進の少なくとも70%は確保できること。
●プロペラは最低4翼以上とし、ステンレスまたは高強度ブロンズとする。翼は取り外し可能であることが好ましい。