日本財団 図書館


サハ共和国(Sakha Republic)、ヤマロ・ネネツ自治管区(YamalNenets Autonomous Okrug)、クラスノヤルスク地方(Krasnoyarsk Kray)などの地方政府は、NSRのインフラを維持する代償としてNSRの通行料の還元を連邦政府と交渉している。1991年以降の大きな特徴は、このように地方政府がNSRの維持に関して大きな役割を果たすようになったことである。民間船社は独立した事業会社で、NSRの商業輸送を行っている。NSRで運航している民間船会社は5社あり、その中で主要な船社は2社である。その一つは、ムルマンスクを拠点とするムルマンスク海運会社で、他はウラジオストックの極東海運会社である。株の一部は政府により所有されており、前述した国家代表が民間船社に送り込まれ運輸省の政策を反映する仕組みになっている。砕氷船は国家の所有物であるが、民間船社が依託を受け運用することになっている。NSRの殆どの砕氷船を運用しているムルマンスク海運会社は、1993年の政府合意に基づき原子力砕氷船を運用している。政府が砕氷船の維持費を負担することになっているが、支払いが滞っている。1998年の政府支出予定2億ルーブルに対して、実績は0.43億ルーブルであり、ムルマンスク海運会社は、その補填として4千万ドルを負担したと報告されている。NSRを実際に通航する船舶の管制業務は運航管制所(Marine Operations Headquarters)が行う。航路の指示、先導する砕氷船の配船、氷況地図の電送などは、運航管制所の所掌である。NSRの運航管制所は2カ所あり、東経125度以東の管制はペベクの、東経125度以西はディクソンの各運航管制所が担当している。前者は極東海運会社が、後者はムルマンスク海運会社が北極海航路局の依託を受け代行している。NSRの維持運営に関する1991年以降の大きな特徴は、このように地方政府及び民間会社が、連邦政府の弱体、行政組織の改革、経済混乱に伴い、NSRの維持に関して大きな役割を果たすようになったことである。

 

4.3.2 通航の申請手続き

 

通航の申請と受理

NSRを通航する船舶の船主は北極海航路局に対して、事前に通航の申請書を提出し、当局は申請に対して通航の可能性と船主が考慮すべき状況を通知することになっている。従って、独自の判断でNSRを通航することは許されていない。具体的には、4カ月前に北極海航路局に以下の項目を記入し、申請する必要がある。緊急の場合、船主は1カ月前に申請することができるがNSRの通行料が割り増しとなる。

●船名、船籍、船主名とその住所

●登録総トン数とネットトン

●総排水量

●主要寸法、エンジン出力、喫水深さ、船速、建造年

●耐氷クラス、船級、最終検査日

●NSR通航に要求される設計、艤装、補給要求から逸脱する項目

●おおよその航海日時

●NSRで汚染事故を起こした場合に対する保険の証明

●航海の目的(貨物輸送、旅客、科学調査)

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION