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コンボイを組んで氷海域を航行する場合、特にクローズトーイングによるエスコート状態においては、砕氷船と被エスコート船の船幅の関係が重要である。氷中を船舶が航行する場合、その後部には、氷況・船型等にもよるが、平坦氷中ではその船舶の最大幅を少し上回る程度の幅のチャネルが形成される。従って、被エスコート船の幅がエスコート船よりも広い場合には、チャネル縁と被エスコート船の効果的な砕氷が期待できない肩部以降の船体との接触が起こり、これに起因する摩擦・砕氷により新たな抵抗が発生する。被エスコート船の幅とエスコート船の幅はこのような状態を避けることのできる関係であることが必要である。このような観点からロシアの砕氷船と氷海商船の船体サイズを見てみることは興味深い。図4.1-11は、ロシア及びその他の氷海船舶の幅及び喫水を長さに対してプロットした図である。ロシアの氷海商船は、幅/長さ比が1/6から1/7程度に集中し、砕氷船の1/5程度に比べて細長い船型となっている。これに対してロシア船以外の氷海商船の幅/長さ比は船により様々である。ロシア氷海商船の幅は、例外的に大きな船体を有する原子力LASH船Sevmorputを除くと、SA-15型商船の24mを最大として、砕氷船の幅よりも狭い。このようにロシアの砕氷船及び氷海船舶は、両者によるエスコートオペレーションを前提とした統一的な設計が為されている。なお、図4.1-11に見られるように、ロシア氷海商船の喫水は、やはり例外的なSevmorputを除くと、10m以下である。これはNSRの浅水域での喫水制限によるものである。

 

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図4.1-11 氷海船舶の長さ・幅・喫水の関係

 

4.1.3 氷海船舶に関わる研究・開発

(1) 近年の氷海船舶の発達

氷海船舶に関する研究・開発は、本格的取り組みが開始されてまだ歴史の浅い若い分野である。従って、氷海船舶に関わる諸技術には、通常船舶についてのものの成熟度に比較して発展途上の部分が少なくない。しかしながら、それ故逆に、技術革新の余地は大きく、新たな発想に基づく技術の考案・実用化が続けられている。特に、近年における氷海船舶用の船型の発展は著しい。これは、一つには、氷の力学的特性並びに船体構造に関わるデータの蓄積及び解析手法の発達により新たな船型に対する構造強度面からの保証が進んだことによる。また、後述するように、新船型の開発並びにその有効性を検証するためのツールとして、氷海水槽における模型実験手法が発達したことによるところが大きい。

 

 

 

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