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図4.1-4 「しらせ」に見る氷海船舶の特徴

 

このような砕氷方法を効率良く実現するためには船首部は浅い傾斜角を有することが有利であり、「しらせ」の船首形状もこの考え方を踏襲するものである。一方、ステム下部にはフォアフット(forefoot)がある。フォアフットの役割は、氷板への船体の乗り上げに対するストッパーである。氷海船舶は、氷が頑強で連続的に砕氷航行ができない場合、一度後進して再度氷に突入するラミングという航法を採ることがある。この場合、氷への突入時に勢い余って船体が氷上に乗り上げ過ぎ、後進が困難となる状況が考えられる。フォアフットはこのような氷上への「乗り上げ過ぎ」を防ぐ役割を持つ。

一方、船底は水平ではなく傾斜(rise-of-floor)がつけられている。これは船底へ流入した氷片が船側へ排除されやすいためである。船底に流れ込んだ氷片が船側に排除されない場合、最終的に推進器との接触を起こす可能性が高い。このような氷との接触は推進器に大荷重を発生させ、事故につながる場合がある。また、船尾の舵上部にある三角形状の突起物アイスシュウ(ice shoe)も、ラミング等のための後進時にチャネル内に存在する氷片との接触から舵及びプロペラを保護するための付加物であり、氷海船舶特有のものである。

以上、「しらせ」を例にとって氷海船舶の船型の特徴を概観したが、本船の目的である南極への人員・物資の輸送のためには氷海域ばかりではなく開水域における特性も重要であり、「しらせ」の船型はこれらの両状態における性能を考慮して設計されている。これに対し、近年、水中での性能を主眼に置いた幾つかの船型が提案・実用化されている。これら新形式の氷海船舶については4.1.3項において述べる。

 

推進システム

一方、氷海船舶の推進システムには、氷中航行の特徴に基づき、次のような性能が要求される。第一に、低速領域において高出力を発生できることが求められる。氷海中では、一般に、大抵抗下、低船速での航行となることから、プロペラは、時にはボラードプル状態に近い条件の中で動作する。氷海船舶のプロペラ及び推進機関には、このような低速領域において高いプロペラ推力を発揮する特性が要求される。第二に、頻繁な運航状態の変更、特に前後進の切り替えに対応できるものでなければならない。氷海域を航行する船舶は様々な氷況に遭遇するため、これに応じて運航状態の変更を強いられることも多い。

 

 

 

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