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3.2.4 北半球の海氷域

 

1973年以降、人工衛星に搭載されたマイクロ波放射計によって、極夜の季節を含む通年の海氷分布が広域に観測できるようになった。北半球の海氷域が最も拡大する3月と最も縮小する9月の月平均海氷分布を、1986年を例にとって並べて示した。薄い青色は海氷のない海である。海氷域の中に水面が見えない密接度100%と推定される所を紫に近い暗赤色で示してあり、密接度に応じてスケールに示したような色分けが施してある。

冬(3月)の北半球海氷域は、北極海はバレンツ海の一部を残して全面が海氷で覆われ、その周辺の海域、ハドソン湾、バフィン湾、ラブラドル海、グリーンランド海、バルト海、オホーツク海、ベーリング海にも拡大する。北緯66.5゜線はアイスランドの北岸近くに位置するから、グリーンランド海東部、ノルウェー海北部、バレンツ海南部は、極夜の季節でも凍らない広大な海面を維持していることがわかる。北極海とハドソン湾は毎冬ほぼ全域に海氷が現れるが、それ以外の周辺海域の海氷域は、年によって海氷の占める割合が大きく変化する。

夏の終り(9月)には、北極海中央部の海氷だけが多年氷となって融けきらずに残る。この多年海氷域はいくつかのアイスマッシフが集まったもので、年によって変動するが、面積の変化だけでなく、その位置も年によって片寄りを見せる。シベリア沿岸に近づく年と、アラスカ、カナダ沿岸に近づく年があり、NSRにとってはその動向を監視し把握している必要がある。この画像の例(1986年9月)では、セベルナヤゼムリヤの両側とウランゲル島の両側とで多年氷が接岸しているが、その両者を比較すると、ノバヤゼムリヤ周辺の方が密接度の多いアイスマッシフが存在していることが読み取れる。

 

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北半球海氷域の月平均分布(1986年の3月と9月)(Parkinson, 1997)

 

 

 

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