3.2 北極海の特徴
3.2.1 北極海に流れ込む大河
北極海を取囲むユーラシア大陸、北米大陸には、北極海に流れ込む大河が数多くある。河川流量で世界7位のエニセイ川を筆頭に、オビ川、レナ川、マンケンジー川の順に続き、この四つを北極海の4大大河と呼んでいる。北極海に流れ込む河川流入水の年間総量は、文献によって推定値に大きな違いがあるが、2,500〜3,500km3に達すると見積もられている。北極海の表層水は東グリーンランド海流に乗って大西洋へと流出するから、北極海は河川流入水を貯えて大西洋に注ぐ巨大な貯水池と考えることができる。北極海から大西洋に供給される年間水量は、アマゾン川に次ぐ世界第2位の供給量となる。
北極海に流れ込む大河は冬には厚い氷で覆われるが、上流から春になり、雪解けを迎える。雪解け水を集めて水位を増した上流の水は、下流の氷を持上げて壊し、まだ厚い氷が張っている川下に向かって氷を運ぶ。氷の堰ができて氷が堆積した状態をアイスジャムと呼ぶ。アイスジャムは雪解け水の流れをも塞き止め、氾濫洪水を起こして、新しい流路を生み出す。広大なツンドラを流れる河川では、半月湖や蛇行の跡をいたるところに見ることができる。
北極海への河川流入水の流量は、雪解け時期が最大で、顕著な季節変化を示す。月間流量がピークに達する6月には、エニセイ川とレナ川が毎秒8万トン弱、オビ川が約3万トン、マッケンジー川が約1.5万トンの流量となる。これらの河川は、冬は毎秒0.5万トン以下と雪解け時期の数分の一から十数分の一の流量に減少するが、それでも日本の主な河川の最大流量に匹敵する。