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3.1.8 北半球の氷期と氷床

 

今からおよそ35万年前に始まった北半球の氷河時代は、氷期・間氷期の大きなサイクルを4回繰返した。現在は最終氷期の後の間氷期で、数千年前に始まり、後水期と呼ばれている。氷期には陸上の氷床が拡大し、氷の蓄積によって海に戻る水の量が減ったので、海面が下がって大陸棚が海面上に顔を出した。間氷期に氷床が融けきらないうちに次の氷期がやってきたために、氷期の繰返しと共に海水準が低下した。海面が最も下がった最終氷期には、海水準が現在よりおよそ120mも低かったと推定されている。

最終氷期のおよそ2万年前には、拡大したスカンジナビア氷床が、北はスバールバル諸島からフランツヨシフ、セベルナヤゼムリヤにいたる大陸棚を覆い、西はイギリス全土に達し、東はタイミル半島付近にまで広がっていた。北米大陸では、ローレンタイド氷床がほぼカナダ全土を覆い、北ではグリーンランド氷床と接し、南は五大湖の南にまで広がっていた。カナディアンロッキー山脈の西はコルディレラ氷床と呼ばれ、アラスカ南岸沿いにアリューシャン列島に達していた。海水準の低下によってカラ海、ラプテフ海、東シベリア海の太陸棚が陸地となった。また、チュクチ海とベーリング海東部の広い範囲が海面上に現れ、ベリンギアと呼ばれた広大な陸地を形成した。このベリンギアを通って先史モンゴロイドがシベリアから北米に渡り、南米にまで移動したと考えられている。

タイミル半島からベリンギアを経てアラスカ北部にいたる地域は、氷床に覆われることなく氷期の寒気に晒された。そのため、地中深くまで凍結して永久凍土が形成された。

後氷期に入って、スカンジナビア氷床は局所的な氷帽や氷河を残して消失した。氷荷重の除去によって、スカンジナビア半島は隆起を続け、今でも毎年1cm位の速度で上昇を続けている所がある。

現在、北極圏に残っている氷床や氷河は、グリーンランド氷床と、カナダ北極諸島、スバールバル、ノバヤゼムリヤ、セベルナヤゼムリヤ、アイスランドなどにある小さな氷床や、アラスカ、カナダ、スカンジナビア半島にある氷帽や山岳氷河などとして、その姿を見ることができる。

 

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最終氷期の氷床と陸地であった現大陸棚(Peltier, 1998)

 

 

 

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