昭和40〜50年代頃から急速に生産量が伸びています。また図5]のグラフは瀬戸内海の赤潮の発生件数です。赤潮は環境汚染の指標とされていますが、赤潮が増えてきたのとほぼ同じ時期に海苔養殖が盛んになってきています。赤潮は汚れの一種ですが、同時に海の生産力が大きくなったことの表れでもあります。それを人工的にコントロールする海苔養殖は、生産量を押し上げる方向にも働かせられます。
ただし、これは寿命の短く再生産の早い海苔だから対応できたわけで、寿命が長く再生産に時間のかかる生物にとっては、このような急激な変化は非常に厳しい条件となります。
魚の立場から考える環境づくり
鷲尾 私たち人間は、陸に住む者の目線でものを考えがちです。魚の立場から見ると、大阪湾は急激に環境が変わり、大きな揺れ戻しが起こっているのです。私たちが海辺に何か手を加えるなら、人間のスピードで考えては具合が悪いのではないでしょうか。
さきほど森崎さんから「子供たちが水をきれいにして欲しいと望んでいる」というお話がありました。これは魚釣りをしたり、泳いだり、直接水に触れたいという子供たちの気持ちの表れだと思います。喜多幡さんからは「市民活動が具体化していくには時間がかかる」というお話がありました。最近の工事や建設整備は、非常に手早く鮮やかにできるようになっています。これは工期の短縮や費用の削減という面では良いかもしれませんが、生態系や人間のコミュニティにとっては少しスピードが早すぎるのではないでしょうか。もう少しじっくりとつきあい、成熟を待って次の段階に進んでいくという「時間軸」を大切にした付き合い方が必要ではないかと思います。
大阪湾の海域に来られた人たちが海の幸に触れていただくにはどうしたらいいか。大阪湾の魚が多様な種類を保ち、食べても安心なものでありつづけるためには、どうしらいいか。