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森崎輝行(もりさき てるゆき)

森崎建築設計事務所主宰

 

1972年神戸大学工学部建築学科卒業。双星社竹腰建築事務所、安藤忠雄建築研究室を経て、1976年森崎建築設計事務所設立。灘・味泥、中央・東出、長田・野田北部を中心に震災後の復興まちづくり、住まいづくりを支援し、特に野田北部・鷹取東第一における被災調査、修繕システムの提案、モデル換地案作成によって区画整理事業の早期合意へ協力。神戸市景観審議会委員。神戸市景観アドバイザー。神戸いきいき推進協議会運営委員長。新長田再開発景観チーフコンサルタント。新長田再開発久二塚6地区コンサルタント。神戸市すまい審議会委員。

 

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第1回世界運河祭(写真1])

 

この世界運河祭では、小樽運河の峰山さん、柳川運河の日野さんなどウォーターフロントのまちづくり専門家によるシンポジウムを開催し、運河の魅力とその展開についてお話しいただきました。また子供たちを対象にした写生会とワークショップも行いました。

また運河開削100年にあたる1999年には、「兵庫区民まちづくり会議」の主催、商工会議所、兵庫区、専門家の支援で「兵庫歴史フェア'99」が行なわれました。このフェアでは小学生に作文を書いてもらい、その内容をパネル展示にして神戸市長や地元の方に提案しました。

通産省の提案公募型地域活性化事業の一環として、平成11年度に地元の関係団体、企業、住民、行政担当者、専門家によって「兵庫運河を活かしたまちづくり委員会」が結成されました。委員会では、学識経験者を招いていろいろな角度から研究を行なっています。

第1回は財団法人神戸都市問題研究所所長の新野幸次郎氏をお招きし、「兵庫運河の夢─19世紀と21世紀をつなぐ街づくり」について、第2回は神戸市港湾局技術部計画課主査の杉村明夫氏に「兵庫運河の現状と将来展望」についてお話をうかがいました。第3回の神戸市立博物館副館長の崎山昌廣氏からは「甦れ『水際の港』よ〜兵庫津の歴史と未来」と題して、施設系の展開あるいは町全体を博物館のようにする「アミュージアム構想」のご提案がありました。「アミュージアム」とは、「ミュージアム」と「アミューズメント」を組み合わせた造語です。10月には「兵庫運河の将来を考えるシンポジウム」を開催、国立民族学博物館教授の石森秀三氏、神戸大学教授の安田丑作氏、神戸商科大学教授の加藤恵正氏から、この地区を民族面、都市計画面、産業面からみたご提案をいただきました。

まだ私案の段階ですが、それらを集約したものをイメージしたのがこの図です(図1])。まず、それぞれの軸をつくります。向って右手は海洋産業軸です。造船業を観光化するという観光造船も含め、遊覧船や連絡船を取り入れていきます。現在の運河を活かすだけでなく、旧海岸線に新たに運河を切り拓き、そこに白砂青松の海岸を復元することも考えています。

中央部の点は小さな運河を表わしています。つまり水のネットワークです。ヴェニスのような水上交通を取り入れることによって、親水性のある生活空間、例えばボート付きの住宅などが考えられます。一番左側の倉庫では、職人たちによる小さなクラフト工房を展開することを考えています。あるいは細い運河に面して、少し猥雑さをもった小さな飲み屋街があるような楽しい空間ができないか。現在中央市場があるところは、グルメを中心としたマーケットが展開できないか。一番北側の高田屋嘉兵衛発祥の地は、兵庫津のプレ・モダン、つまり神戸のまちなみ発見の場のように考えています。

私たちは、これらのことをできることから一つずつ応援していきたいと思っています。そのためには当然、地元の方や企業の方との連携が必要です。今の構想では企業用地に運河を開くことを想定していますが、もちろんこれはまだ承諾されたものではありません。こうしたことを手法的にも解決していきたいと思っています。

今後のまちづくりのキーポイントになるのは三菱重工業、川崎製鉄などの重工業です。これらの産業は構造が変化してきており、当然企業側も変革しようとしています。それらを一緒になって考えていきたいと思います。また、道路公園的な整備や一般購買施設の不足もネックです。観光化・商業化と同時に、就労人口と居住人口がつながるような職住隣接のしかけや新しい産業をつくることも考えています。

もちろん「このままの町でいい」という人もいます。また防災的な見地も必要です。そしてコミュニティというのは、ねばねばとした一種の監視状態が生まれることも事実です。現代は、若い人が住みたくなるようなコミュニティのあり方や世代か継承するようなあり方が問われています。そのためには、ハード面だけでなくソフト面でも今までとは少し違う展開があるのではないかと考えます。

 

 

 

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