発生源での対策
琵琶湖の水の浄化には、発生源の対策が必要です。現在滋賀県では、難分解性有機物の除去まで行なう「下水道の超高度処理」や、土に水を浸透させ、その濾過効果と土中の微生物の力を使って水を浄化する「農村集落排水施設の高度処理」も計画されています。
さらに「面源負荷対策」があります。汚濁の形態には、家庭系・工業系排水のように、公共用水域への排出が点的で人為的にコントロールしやすい「点源負荷(ポイントソース)」と、自然系・農業系のように排出が面的で人為的にコントロールしにくい「面源負荷(ノンポイントソース)」の2つがあります。1995年の調査では、琵琶湖における面源負荷は、CODで52.2%、窒素で59.0%、リンで34.5%と非常に高い割合を示しています。したがって、下水道や工業排水などの点源負荷に対する対策だけでなく、面源負荷への対策が重要になってきます。
また、使った水をすぐに公共用水域に流さず、何度も繰返し使っていく地域循環システムの確立が今後の課題となっています。
流出過程および湖内での対策
流出過程での対策としては、河川内での水質浄化、植生による浄化、干拓されてしまった「内湖」の復元、ダムにおける汚濁物の除去などが必要です。
また湖内での対策としては、藻類の刈り取り除去、浮遊ゴミの除去、底泥の浚渫が挙げられます。さらに、浚渫によってできる汚泥の有効利用なども、これからの課題となってきます。
ビオトープによる生物生息空間の確保も重要です。ヨシ帯の増加という量的改善はもちろんですが、ただ点在させるのではなく、ネットワークすることによって質の高い生息空間をつくっていくことが必要です。さらに総合的なモニタリングの実施、森林・農地の確保、市街地での浸透性舗装の推進、家庭で雨水を浸透貯留する浸透升の設置なども有効とされています。
自然環境地域、農村地域、都市部が、それぞれの地域にあった対策で取り組むことが、総合的な水質浄化と水循環につながるのです。
Biyoセンターの取り組みと今後の展開
「琵琶湖・淀川水質浄化共同実験センター(愛称:Biyoセンター)」は、「水環境改善技術の研究、開発による知見の獲得の場」「水環境改善のための各種機関・研究者や各分野との連携の場」「水環境改善の広報・啓発や環境学習の場」となることを目的としています。
当センターの特徴は、第1に施設面積が2.5haもあり、12種類におよぶ大規模な実験が可能であること。第2に琵琶湖南湖、都市河川としての葉山川、農業排水路の3種類の原水を取水できること。第3に湖岸緑地の中にあり、実験施設内であっても基本的に住民の立ち入りが自由であることです。
今後は、得られた成果を実施設へ適用し、実施設から得られた情報を実験施設にフィードバックしながら、より効果的な施設づくりのためのデータを蓄積していくことが課題です。
また、多自然型の川づくりやヨシ帯の保全・増加などによって、多様な生態系の創生と活用を試みたいと考えています。ダイオキシン、環境ホルモン等の新たな環境汚染物質への対応も必要です。
シンポジウムの開催、情報誌の発行、各研究機関との交流を通じて情報発信に努めると同時に、クレソンの摘み取り体験や自然観察会を実施して、地域の方々との連携も深めています。
質疑応答
【質問】赤潮の発生件数は、一度減ってきていたのに、平成5年から8年までは再び増えてきているようです。その後はどうなっているのですか?