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ワークショップvol.11

 

湖・川・海の連携─循環型社会を目指した水辺環境の整備と活用

 

講演「琵琶湖における水質改善の試みと可能性」

中山繁氏/財団法人琵琶湖・淀川水質保全機構

琵琶湖・淀川水質浄化共同実験センター所長

 

財団法人琵琶湖・淀川水質保全機構の概要

財団法人琵琶湖・淀川水質保全機構は平成5年9月に設立されました。琵琶湖・淀川水系の水質保全に対して、国や関係自治体だけでなく、地域住民や企業が一体となって取り組んでいくためにつくられた財団で、流域の2府4県3市の自治体および民間126社からの出捐金と賛助会員の会費収入等によって運営されています。

 

●琵琶湖の諸元

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出典:滋賀の河川(滋賀県土木部河港課/平成7年3月)

琵琶湖と自然−四訂版−(滋賀県生活環境部/平成9年3月)

 

琵琶湖の現状と課題

琵琶湖は近畿圏の約1400万人の水源であると同時に、周辺には約120万人が生活しています。つまり120万人分の汚濁負荷を抱え、同時に湖の魚が食用にされる、まさに生活に密着した湖なのです。

全国の湖沼の水質をCOD(化学的酸素要求量)値でみますと、きれいな湖とされる十和田湖は1.5mg/l、阿寒湖は3.2mg/l、尾瀬沼は3.5mg/lです。逆に、霞ケ浦や手賀沼、諏訪湖などは汚れています。琵琶湖はこれだけ負荷が入りながらも、北湖で2.8mg/l、南湖が3.5mg/lですから、比較的きれいな状態を保っていると言えます。ただし、環境庁の定めた環境基準COD値1.0mg/lは、まだ満たしてはいません。また、富栄養化の原因となるT-N(全窒素)についても基準を満たしていません。T-P(全リン)の環境基準についても、北湖では最近達成しましたが、南湖は未達成です。

その上、CODや全窒素が漸増しています。特に、CODが1985年頃から増えているのに対して、BOD(生物化学的酸素要求量)は減少しています。原因はわかっていませんが、このCODとBODの乖離現象は、琵琶湖の課題の1つです。

また、淡水赤潮やアオコがほぼ毎年のように発生していますし、水道水におけるカビ臭も頻繁に報告されています。最近は、新たにダイオキシンの問題や環境ホルモンの問題なども出てきました。

 

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ピアザ淡海で講演する中山氏

 

ヨシ帯の減少による生物体系の変化も、大きな問題の1つです。最近、ブラックバスやブルーギルなどの外来魚が増え、昔から琵琶湖に生息している魚が減っているのはヨシ帯の減少によって、産卵場所や隠れ場所がなくなっていることが原因の一つだと言われています。またヨシ帯には、湖岸の浸食防止効果や水質保全の効果もあります。

 

●COD(平均)

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●T-N(平均)

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●T-P(平均)

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●北湖におけるBODとCODの乖離

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滋賀県の対策

滋賀県では、昭和47年度から平成8年度までの25年間、「琵琶湖総合開発事業」として総額1兆9千億円を費やし、治水、利水および保全対策を実施してきました。その中で下水道普及率は飛躍的に向上しました。また、新たに家を建てる場合には合併処理浄化槽を設置するよう定められた「水すまし条例」、さらに「公害防止条例」の強化、リンの入った洗剤の販売を禁止した「富栄養化防止条例」あるいは「ヨシ群落保全条例」なども定められ、琵琶湖の水をきれいに保つ努力がなされています。

 

 

 

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