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4. IMOの船員の教育・訓練に係わる対応

 

IMOで定められた数多くの国際ルールを各国が批准し、実行していくことが『安全な航海ときれいな海』を維持する上に重要であることに着目し、IMOはその戦略の一つとして、『海運関連の責任ある立場の人を教育訓練することを通じて、発展途上国に優秀な人的資源を供給し、世界海運の健全な発展を期す』ことを目的に、世界海事大学WMUの設立を支援し、『長期的総合的な政策の実施手段』として位置づけている。

WMUは1983年に創立され、現在まで世界120カ国から留学してきた1000名以上の卒業生を送り出し、出身国の海運、港湾、造船、船員教育の分野で活躍しているが、日本財団はWMUに奨学金制度を通じて絶大な支援を行っている。

なお、WMUは大学内に国際海事教育者協会(IMLA)の事務局を設置し、海事に関する世界の教育者間の『先端的な船舶技術及びそれに対応する教育訓練方法に関する情報及び意見の交換を行うこと』によって、世界の船舶運航技術の向上を図っている。

IMLAはIMOから専門諮問機関に認定され、現在60カ国から海事教育機関の学校長を含む約300名の会員を擁し、1996年には日本財団の特別協賛を得て、『先端技術と船舶運航』をテーマに神戸において42カ国、200名を越える参加者による国際会議を開催し、成功裏に終始した。

AMETIAPの設立の経緯や目的、現在の構成や『共通の課題』については、報告書本文各項に詳しく述べられているので省略するが、AMETIAPもまたIMOが公式に認知する協会組織であり、STCW条約発効に伴う『アジア太平洋地区における海事・訓練について、条約の国際基準を満たす最も効率的な教育・訓練手法を模索する情報の交換』を目的に設立されていることは見逃すことができない。

また、IMOは1997年及び1998年の2回にわたり、AMETIAPを通じて、STCW条約関連の海事英語教育に係わるワークショップをシンガポールと上海において開催することを支援している。

STCW条約は、かく程左様にSeamens' Industryと称して世界の海運に船員を供給している発展途上国は勿論、これらの船員を配乗して船舶を運航している海運先進国にも重大な影響を及ぼすものであり、相互間の国際協調が極めて重要となっている。

 

5. 我が国の船員教育・訓練に係わる対応

 

世界の海運情勢に伍して、自由な船舶運航を行うには、我が国特有の諸規制や高コスト構造をグローバルな視点に立って改善していく必要があることは海運関係者の誰もが認めているところである。

この解決手段として『国際船舶制度』が提言され、国際船舶における日本人船・機長2名配乗制度を実現する方向に向かっている。1998年には船舶職員法が一部改正され、STCW条約が認める締約国の資格を我が国が承認するための方法について通達も出された。従って、今後は外国籍船に止まらず、日本籍船にも混乗体制が浸透してくることが予想される。

ついては、益々、世界、特にアジアの船員の教育・訓練体制を見守り、優秀な人的資源を日本が運航する商船隊に供給する手だてを確立しなければならない。

 

 

 

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