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部分的に燃焼したあとで残った残留物は、通常はやっかいで、自然に風化した油よりも扱いにくい。

 

(4) 溶解

油が溶解する速度と程度は、その組成、拡散の範囲、水温、乱流、分散程度に依存する。原油の重い成分は海水に対して、事実上、不溶性である。一方、軽い成分、とくに、ベンゼンとトルエンのような芳香族炭化水素は、僅かに可溶性がある。しかしながら、これらの成分は、また、最も揮発性が強いので、非常に急激に蒸発によって失われる。一般的に、溶解によるよりも蒸発によって10〜1,000倍早く失われる。そのため、溶解した炭化水素の濃度は、1ppmを超えることは稀である。そして、溶解は、海面からの油の除去に対して重大な寄与をすることはない。

 

(5) 分散

海面の波と乱流は、油塊に作用してある範囲の大きさの油滴を海面上に生じさせる。小さい油滴は懸濁状態で残り、大きな油滴は、海面に再浮上して前進していく油塊の後方で、他の油滴と合体して油塊を形成するか、非常に薄い油膜となって拡散する。懸濁状態になる程十分に小さな油滴は水中に混入する。この分散による油の表面積の増大が他の作用、例えば、生分解、沈降等の作用を促進することがある。

自然分散率は、主として、油の性質および海の状態に依存していて、白波の見られる水域では分散は非常に迅速に進行する。油塊の厚みは、流出量と拡散の程度とに関係するものであるが、薄い膜から小さな油滴を生ずるので、分散率の重要な要因になっている。

流動状態のまま、拡散可能な状態で、他の風化作用によって阻害されないときは、風力階級4程度(ビューフォート)の海況でも数日以内に完全に分散する。逆に、粘度の高い油、または、油中水型の安定したエマルジョンを形成している油は水面上で厚いレンズ状になる傾向があり、分散する傾向はほとんどなくなることが示されている。そのような油は数週間持続することがある。

 

(6) エマルジョン

多くの油は、水を吸収して、油中水型のエマルジョンを形成し、汚染物質の体積は3ないし4倍に増大することがある。そのようなエマルジョン作用が、しばしば、極端に粘度を高め、油を分散させようとする他の作用を遅らせる。これが海面で軽質および中質原油の持続性の主な要因になる。海の状態が中程度ないし荒れている場合、多くの油が急激にエマルジョンを形成する。エマルジョン安定度は、アスファルテンの含有量に依存している。アスファルテンの含有率が5%以上の油は安定したエマルジョンを形成する傾向があって、しばしば「チョコレートムース」と呼ばれている。一方、この含有率の少ない油は分散する傾向がある。エマルジョンは、穏やかな状態で日光によって加熱されると、または海岸に打ち上げられると、再び、油と水に分離する。

 

 

 

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