また、海面の波等が油面に作用し、均一な漂流とはならず、風下側に油層の厚い部分を形成し、風上側は不完全な尾部を形成する。
一般に風下側の油量は、全体の90%に近い値といわれている。
(3) 蒸発
蒸発の速度と程度は、主として、油の揮発性によって、決定される。低沸点の成分の比率が大きいほど、蒸発量が大きい。表面積が大きいほど、軽い成分は、迅速に蒸発するので、油の初期拡散速度も、また、蒸発に影響を与える。波が荒くて、風速が強く、温度が高いと蒸発速度が、さらに高くなる。一般的に200℃未満の沸点を持つ油の成分は温暖水域では24時間以内に蒸発する。
精製後の製品、たとえば灯油とガソリンは流出後数時間以内に完全に蒸発する。また、軽質重油は、最初の日に最大40%が失なわれることがある。これとは対象的に、重質原油と燃料油は蒸発するとしても、ごく僅かである。蒸発後に残る油の残留物は、密度と粘度が上昇し、その後の風化作用と清掃技術の選択に影響を与える。
極端に揮発しやすい油が閉鎖された水域に流出した場合、火災と爆発の危険性があるかも知れない。油が可燃性であることが、海面の油塊を燃焼させようという発想にしばしぱ結びつく。油塊に着火させることは可能ではあるけれども、とくに流出したばかりの油には多くの場合油の層が薄いことと、下にある水の冷却効果によって、灯芯材が用いられた場合でも、燃焼を維持することは困難である。