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問題点は主に病状の進行にともなう各種の身体症状に関連するものであった

2) 「家族」の初回訪問時およびその後のプロセスにおける問題点はAステーションとBステーションの間でそれほど大きな差は見られなかった

 

これらのことから、訪問看護で在宅ホスピスケアを提供することにより、症状コントロールが行われ、家族もサポートをうけることができ、より多くの患者が自宅で最後を迎えられることが分かった。また再入院して病院で死を迎えることになった場合でも、入院期間が短くてすむこともわかった。しかし在宅ホスピスケアが有効に機能するためには、その地域にホスピス・緩和ケア病棟が存在するか否かが影響を与えている。したがってホスピス・緩和ケア病棟がある地域では、密接な連携システムを作ることが、在宅ホスピスケアの効果を上げるために重要なことであると考える。また、AステーションとBステーションの実態調査で得た結果から、訪問看護婦の質の向上、特に病態のアセスメント能力、症状コントロールの知識・技術、家族サポートの技法を高める努力が必要であることがわかった。

しかしまた、在宅ホスピスケア専門の訪問看護ステーションを運営することは、現状の医療保険制度では、経済的に困難であるという実状も認識できた。この点も改善されなければ、今後の在宅ホスピスケアの発展は期待できないと考える。

 

2. 在宅ホスピスケア・訪問看護の実践をとおして確認した諸問題

 

本研究スタッフが直接がん終末期患者に対して訪問看護を行い、在宅ホスピスケアのあり方を検討した。訪問看護を実施できる期間が限られていたので、対象事例数は6例だけであった。年齢は35歳〜71歳、男性2名、女性4名であった。肺がんが2名、肝細胞がん、顎下腺腫瘍、腎がん、腰椎骨肉腫の中で、肺転移が2名にあった。

訪問看護対象者選択の便宜上、今回の全ての対象者が緩和ケア病棟からの退院患者であった。しかし「在宅ホスピスケアとは緩和ケア病棟からの退院者だけに提供されるもの」と考えているわけではない。このような諸条件の制約があるが、在宅ホスピスケア・訪問看護の実践をとおして確認した諸問題について報告する。

 

 

 

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