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オランダのナショナル・オンブズマンの仕事は政府当局の「不正義につながる悪い行政」に関する苦情の処理に重点を置いている。警察に対しても権限をもっており、人権問題に関する苦情も非常によく取り上げられる。権威は独立性、公平性、プロフェッショナリズム、これについては、新聞その他のニュースメディアにおける広報が重要な役割を果している。ナショナル・オンブズマンの機能の発展に伴い、オランダの行政法の新しい分野として、苦情を申し立てる権利は、オランダでは成熟に至ったといえる。特に、1999年7月1日、政府機関が苦情を処理する方法の一般ルールを定めた、新しい章が一般行政法典に加えられた。この新しい章は、政府当局自身が、国民に適切な対応をする主な責任を担っていることを明記している。

このことは、ナショナル・オンブズマンに更に新しい任務が与えられたことを意味する。その任務とは、政府当局内部の苦情処理手続きを監視することである。

 

5 今後の課題

理想的な世界では、政府は、その存在理由が規定するとおりに、自らの利益を追求することなく国民と社会に仕えるという行動を取るであろう。政府の行動には、国の法律を尊重し、ひいては自らが従う高い倫理的基準を尊重する態度が示される。オンブズマンは、理想の実現に向けて努力すべきである。

オンブズマンは国民との関係においてもろい側面を持つ存在である。オンブズマン制度が存在していることで、この制度によって与えられる保護への期待が高まる。したがって期待に答えられない場合、非難がオンブズマンに向けられることもあり得る。結果によっては制度への国民の信頼は損なわれるのである。

他方、オンブズマンは、その対象となる政治・行政システムとの関係でも常にその足もとがゆらぎ得る立場にある。オンブズマンは、政府当局を批判的な目で見て、その批判的見方を必要に応じて表明することにひるまないことが非常に重要である。オンブズマンとそのスタッフは、プロフェッショナリズム(職業的専門中立性)の最高基準を満たさなければならないということである。最高基準が全て満たされたとしても、オンブズマンの進む道はそんなに平坦ではない。オンブズマンの任命担当者の不興を買ったり、政治的ライバルと見なされたりして、再任が拒否されたケースも知られている。こうした困難にもかかわらず、西暦2000年を前にして、オンブズマンは多くの国々の組織構造の中で永続的な位置を占めるようになった。新規に導入されたオンブズマン制度は、その位置を確かなものとする努力をし、既存のものは新しい課題にひるまず直ちに取り組む構えを持ち、過去の反省を生かして仕事の向上を図らねばならない。日本にも当てはまる。日本の行政相談制度が導入されたのは45年近く前だからである。その後、日本は大きく変わり、それに伴って行政相談制度も変化している。

 

 

 

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