まえがき
現在サンゴは熱帯・亜熱帯に分布しており、地球環境変動に敏感に反応する生物的な指標として用いられるために世界的に注目されています。
サンゴ礁研究が重要性を増してきた背景としては、1992年ブラジルのリオデジャネイロで開かれた地球サミットにおいて、アジェンダ21「持続可能な開発のための人類の行動計画」が採択されたことに始まります。その中の第17条に、サンゴに関連して、「サンゴ礁やマングローブ林は、地球上でも最も多様で、総合的かつ生産的な生態系に数えられる。それには重要な生態上の機能を果たし、海岸を保護し、また食料、観光及び経済開発のための重要な資源となっている。世界の多くの部分でこのような沿岸系が人為と自然の双方の多様な原因によって脅かされている。」との記述が採択されております。
したがって、科学技術庁としても、世界的な視野に立ち、地球環境におけるサンゴ礁生態系の重要性に鑑みて、海洋科学技術センターを通じて、研究開発活動を実施しております。
平成10年度には、沖縄近海におけるさんご白化現象が社会問題になり、科学技術庁でも科学技術振興調整費「サンゴ白化現象の機構解明に関する緊急研究」を行うなどの対応を行っております。
現在、地球温暖化、オゾン層の破壊その他、多くのグローバルな環境問題のなかで、我々人類を含む地球生態系の健全性の保持そして存続が懸念されるに至っています。
こうした変動に際し、サンゴ礁は、何よりも先に敏感に反応し、なおかつ世界的な指標になると考えられ、さらに地球温暖化現象の抑制に寄与している可能性が大であると考えられています。こうしたなか、サンゴ礁で起きている生物的な営みが、多くの未解明部分を有した、極めて複雑な状態にあると言うことを知りました。浅くて近い、親しみのある分野ですが、我々の得意な先進技術を活用して研究に寄与したいと考えます。
平成12年2月23日 開会挨拶要旨
科学技術庁研究開発局長
池田 要