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6. 試験

 

6-1 北極海でのShakedown試験

最初のShakdown試験は1995年4月、カナダ軍基地Alertの西6kmのところにあるJolliffe湾という小さな湾で行われた。このサイトでは翌年のケーブル敷設のミッションも行われた。この試験の目的は、一つには現場での技術を確認することでもある。サイトでのビークルの組立の手順を試験することや、氷を通してビークルを投入したり回収する技術を改善することである。しかし、主な目的はビークルとそのシステムすべての氷海下でのテストであった。

氷海下での航走を4回、もっとも長いもので5kmの航走を行った。音響テレメトリがビークルと通信が十分できるほど信頼性がまだなかったので、潜航中に敷設したファイバケーブルを通して制御を行った。

音響テレメトリが最初はうまく機能しなかったためこの方法は非常に有用であった。しかし、ぺラのモータのコントローラがテレメトリと非常に近い周波数で動いているため音響的に深刻な干渉を起こしていることが分かった。モータをbubble packで包んで干渉を減らすと、音響テレメトリは3kmの距離まで通じることができた。これはJoffille湾周辺の浅海域では十分な距離であった。その後の試験ではモータの周波数を変えることでこの干渉の問題は全く無くなった。

ホーミングシステムは送受波器を固定した状態で7km以上の距離で、送波器が移動しながらの状態で3km以上の距離で良好に作動した。

ビークルのケーブル投棄のシステムも良好に動作し、厚さ2mの氷を通しての投入・回収の技術も問題なかった。

 

6-2 Nanoose Rangeでの航走試験

1996年1月に最初の航走試験がNanoose Range(ブリティッシュコロンビア州のバンクーバー島)のCFMETR (Canadian Forces Maritime Experimental and Test Range)で行われた。この試験は、北極域でのフルミッションと同じ距離でナビゲーションの精度をテストするのと同時にビークルの耐久性、信頼性を確認するものでもあった。

テセウスは20kmレンジの周りで8周し、そこまでの往復も含めて合計360kmを航走した。その合計時間は50.6時間であった。テセウスは良好に稼動し、バッテリも半分以下しか消費しなかった(360kWの内145kW)。

ナビゲーションの精度は、前もって海底に設置した装置から音響で得られる真の位置と、自身の航跡推定値を比較することで決定した。その地点を最初に横断したときは、ビークルの横方向の誤差は移動距離の0.45%で、前後進方向の誤差は0.5%だった。この横方向の誤差はおよそ0.26度の方位誤差に起因する。この方位誤差がINUとドップラーソナーとのアライメント誤差のみが原因であるとして、INUのヨー方向の誤差修正を音響テレメトリに与えた。この修正によって、次のレグでは移動方向の誤差は0.05%のオーダーに、方位誤差は0.03度のオーダーに抑えられた。これは予想以上に高い精度であった。

 

 

 

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