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6.2 実船試験結果との比較

全章での尺度影響の考察に基づき、Fig.17で求めた10×KQの分離成分値から、Fice成分及びFinertia1成分の実船での値への換算を考える。実験時の海氷の曲げ強度約300kPaから、実海氷の圧縮強度をその5倍と仮定して(ロシアでの実海氷データを参考にした。)1500kPaとした。プロペラ回転数10rpsにおいて、縮尺1/10.899を用いて、Fice成分が尺度の3乗に比例、Finertia1成分がが尺度の4乗に比例するとして実船換算のそれぞれのトルク成分を求めると、Fice成分が1.1×104Nm(1.1×103kgm)、Finertia1成分が1.3×105Nm(1.3×104kgm)となる。Fig.18に、Fig.17を実船尺度に変換した10×KQの荷重成分分離結果を示す。

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Ice Compressive Strength σ (kPa)

FIg.18 実船推定トルク荷重成分

 

Table3 「てしお」実船試験トルク変動成分

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*"Coodinated" means parallel run with another icebreaker "PM SOYA"

一方、Table3は「てしお」での実船試験時に計測された各試験でのトルク変動成分の最大値を示す。この表より、直進航行試験時のトルク変動成分の最大値は出力4/4の時で1.4×105Nm(14030kgfm)、協調砕氷航行試験時の最大値は1.8×105Nm(18589kgfm)であり、模型実験からの換算値に近い。Fig.18にこの2点を加えた。

実船のプロペラ回転数は4.77rps及び4.62rpsで、模型実験の約1/2である。模型実験結果によればFice成分については、比較的回転数の影響は少ないと考えられるが、Finertia1成分は回転数に比例すると仮定すれば約2倍大きめの予測となっている。一方、模型試験での氷片サイズを実船に換算すると、54cm×54cm×16.3cm となり、縦横のサイズは現実的であるが、氷厚が実海氷での約 1/2となっている。プロペラ回転数と氷片サイズ両者の影響が相殺して、実船換算値が実船試験の値に近くなったと考えられる。Finertia1成分が尺度の4乗に比例するという仮定には根拠があり、模型実験から実船の値への変換の第一次近似式として使用できると考えられる。

 

 

 

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